腎臓の働きが落ちている人はサプリを飲んでいいか。薬剤師がマグネシウム・カリウムの注意を判定する
- 腎機能が落ちている人の論点は「成分が効くかどうか」ではなく「入れたものを外に出せるかどうか」だ。出しきれない成分は体内にたまる。
- とくに注意はマグネシウムとカリウム。マグネシウムは重篤な健康被害の報告があり、行政から医療者向けに注意喚起が出ている成分でもある。
- 当サイトが扱う睡眠成分そのものより、複合サプリに混ざったミネラルと、すでに処方されている便秘薬との重なりが実害につながりやすい。

1まず押さえる一点
健診で腎機能の数値を指摘された人、あるいは慢性腎臓病として通院している人がサプリを検討するとき、まず見るべきは成分表の「ミネラル」だ。腎臓は、体に入った余分なミネラルを尿として捨てる出口にあたる。その出口が細くなっている状態で入口を広げれば、血液中の濃度は上がる方向に動く。効き目の議論に入る前に、この一点を押さえておきたい。
2なぜ気をつけるのか:出口が細くなる仕組み
マグネシウムは、体内で使われたあと主に腎臓から尿へ排泄される。腎機能が低下すると排泄が追いつかず、血中のマグネシウム濃度が上がりうる。これが高マグネシウム血症で、吐き気、脱力感、立ちくらみ、脈が遅くなる、傾眠といった形であらわれる。
この現象は理屈の上の話ではない。便秘薬として広く使われる酸化マグネシウム製剤では、2008年9月に「高マグネシウム血症」が重大な副作用として添付文書に追記され、2015年10月と2020年8月には製造販売会社の連名で医療者向けの「適正使用に関するお願い」が出ている(医薬品医療機器総合機構=PMDAのサイトで公開)。2020年版の書き出しは、2015年のお願いの後も重篤な転帰をたどる症例(死亡または死亡のおそれ)が報告されている、というものだ。
発症しやすい人として挙げられているのは4つで、長期間服用している人、腎障害のある人、高齢の人、便秘症の人である。さらに、便秘症の人では腎機能が正常でも、通常用量以下でも重篤な例が報告されていると明記されている。医薬品ですらこの扱いである以上、同じミネラルをサプリから足すことは、慎重に見る価値がある。
カリウムも同じ構図になる。腎機能が低下すると排泄が追いつかず、高カリウム血症のリスクが上がる。こちらは不整脈につながりうるため、野菜ジュース・青汁・カリウム配合のサプリを「体にいいもの」として足す行為が、腎臓の弱い人では逆向きに働くことがある。
3眠気が増えたら「効いている」と読まない
睡眠サプリの文脈で、この資料のいちばん重い一行はここだと考えている。同じお願いに載っている血清マグネシウム濃度と症状の対応表では、最初の段階(4.9mg/dL以上)の症状として、悪心・嘔吐、起立性低血圧、徐脈、筋力低下と並んで、傾眠、全身倦怠感、無気力が挙がっている。
眠りを期待してマグネシウム配合のサプリを飲んでいる人が、日中もぼんやり眠い、体がだるいと感じたとき、それを「よく効いている」と受け取るのは自然な流れだ。ただ、腎機能が落ちている人や酸化マグネシウムを毎日飲んでいる人では、その眠気は高マグネシウム血症の初期症状と見分けがつかない。期待している作用と、避けたい副作用の入口が同じ言葉で書かれている。ここが取り違えの起きやすいところになる。
資料には症例も2つ載っている。そのうち1例は慢性腎臓病のある70歳代の男性で、酸化マグネシウムを1日2回飲んでおり、併用薬には睡眠薬(ゾルピデム)も含まれていた。入院後も吐き気と食欲不振が続き、原因を探るために血液検査をしたのは入院18日目で、血清マグネシウムが4.2mg/dLと高かったため酸化マグネシウムを中止し、2日後に症状が改善している。症状が出てから数値を測るまでに時間がかかった、という経過そのものが教訓になる。
4「1日350mgまで」は腎臓の安全ラインではない
マグネシウムのサプリを調べると、1日350mgという数字をよく見かける。出どころは厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で、サプリメントなど通常の食品以外からとるマグネシウムの耐容上限量を、成人で1日350mg、小児で体重1kgあたり5mgとしている。
ここで押さえておきたいのは、この数字が何を根拠に決まったかだ。報告書は、食品以外からのマグネシウムを過剰にとったときに起こる初期の好ましくない影響を下痢とし、下痢の発症の有無を上限を決める指標にしている。つまり350mgは、下痢を起こさないための線として引かれたもので、腎臓から出しきれずに血中にたまるかどうかを判断する線ではない。先のお願いが、便秘症の人では通常用量以下でも重篤な例があるとしている以上、腎機能が落ちている人が「350mg以下だから大丈夫」と読むのは、数字の使い方を取り違えている。
もう一点、処方薬との合算で見落としやすいのが単位だ。酸化マグネシウムの錠剤に書かれている330mgや500mgは、酸化マグネシウムという化合物の重さで、マグネシウムそのものの量ではない。原子量から計算すると、酸化マグネシウムに含まれるマグネシウムは重さの約6割にあたる。330mg錠1錠でマグネシウムとして約200mg、500mg錠なら約300mgになる。サプリの成分表は多くがマグネシウムとしての量で書かれているので、足し算をするときは単位をそろえてからにしたい。
5具体的に注意したい組み合わせ
- マグネシウム配合の睡眠サプリ:GABAやグリシンとマグネシウムを組み合わせた複合製品は多い。マグネシウムの基礎で書いたとおり、健康な腎臓であれば余分は尿へ出ていく。腎機能が落ちているならこの前提が崩れる。
- 便秘薬(酸化マグネシウム)を飲んでいる人:ここがいちばん見落とされる。処方薬でマグネシウムを毎日とっている上に、サプリからも足せば二重取りになる。飲んでいる便秘薬の成分名を確認したい。
- 制酸剤・胃薬:マグネシウムやアルミニウムを含む市販胃薬がある。胃薬とサプリの飲み合わせも併せて確認したい。
- 降圧薬との重なり:腎機能低下と高血圧は併存しやすい。マグネシウムと降圧剤の関係は別記事にまとめた。
- たんぱく質系サプリ:腎臓の状態によっては、たんぱく質の摂取量に制限がかかることがある。高齢者とプロテインで触れたとおり、制限の指示が出ている人は自己判断で足さない。
- 当サイトの7成分について:GABA、L-テアニン、グリシン、クロセチン、ラフマ、ALA、ガセリ菌CP2305そのものについて、腎機能低下時の相互作用として確立した報告は見当たらない。ただし製品はたいてい複合だ。判定は成分名でなく、製品の成分表全体で行う。
6自己判断で足さない・止めない理由
腎機能は自覚症状が出にくい。だるさや吐き気が出たときには、すでに数値が動いていることがある。逆に、医師から処方されている酸化マグネシウムを「危ないらしい」と自分で止めれば、便秘そのものが悪化する。判断の材料になるのは、直近の血液検査で出ているeGFRやクレアチニンの値であって、体感ではない。
7どんなときに受診・相談すべきか
サプリを始めてから、吐き気、強い脱力感、立ちくらみ、脈が遅い感じ、いつもと違う眠気が続く場合は、様子を見ずに主治医・薬剤師に相談したい。腎臓の外来にかかっている人は、次の診察で成分表そのものを見せるのが早い。製品名だけでは、中に何が何ミリグラム入っているかまで医療者は判断できない。
8この記事のポイント
- 腎機能低下時の論点は成分の効き目でなく、排泄できるかどうか
- マグネシウムは腎臓から排泄される。出口が細ると血中濃度が上がりうる
- 酸化マグネシウム製剤には、重篤例を受けて製造販売会社が出した医療者向けの注意喚起がある
- 高マグネシウム血症の初期症状には傾眠・倦怠感が含まれる。眠気の増加を「効いている」と読まない
- 食事摂取基準の350mg/日は下痢を指標にした上限で、腎機能低下時の安全ラインではない
- カリウムも同じ構図で、高カリウム血症は不整脈につながりうる
- 実害は単一成分でなく、複合サプリ+処方の便秘薬の二重取りで起きやすい
- 判断材料は体感でなく直近のeGFR。成分表を持って相談する
9確認したうえで選ぶなら
ここで挙げたのは一般的な組み合わせの注意で、自分の薬と体調に当てはまるかは別の話だ。飲んでいる薬がある人は、かかりつけの医師・薬剤師に確認してほしい。そのうえで選ぶなら、成分名ではなく悩みと届出の対象で絞るのが早い。
- 他の薬との組み合わせを見る:飲み合わせの総合ガイド
- 悩みから絞る手順:睡眠サプリの選び方
- 届出を照合した横断比較:睡眠サプリの横断比較表
- 酸化マグネシウム製剤 適正使用に関するお願い -高マグネシウム血症-(2020年8月、酸化マグネシウム製剤製造販売会社):医薬品医療機器総合機構(PMDA)掲載, https://www.pmda.go.jp/files/000235889.pdf(本文・症状対応表・症例を確認 2026-09-28)
- 日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書 ミネラル(多量ミネラル)マグネシウム「過剰摂取の回避・耐容上限量の策定」:厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf(確認日 2026-09-28)
- 医薬品添付文書情報(酸化マグネシウム製剤ほか):PMDA(https://www.pmda.go.jp/)
- 酸化マグネシウム製剤の腎機能低下患者における血清マグネシウム値への影響:日本腎臓病薬物療法学会誌(J-Stage, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjnp/2/1/2_3/_pdf/-char/ja)
- 成分の安全性情報:国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報(HFNet, https://hfnet.nibiohn.go.jp/)
- 確認日 2026-07-27
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