腎臓の働きが落ちている人はサプリを飲んでいいか。薬剤師がマグネシウム・カリウムの注意を判定する
- 腎機能が落ちている人の論点は「成分が効くかどうか」ではなく「入れたものを外に出せるかどうか」だ。出しきれない成分は体内にたまる。
- とくに注意はマグネシウムとカリウム。マグネシウムは重篤な健康被害の報告があり、行政から医療者向けに注意喚起が出ている成分でもある。
- 当サイトが扱う睡眠成分そのものより、複合サプリに混ざったミネラルと、すでに処方されている便秘薬との重なりが実害につながりやすい。
1まず押さえる一点
健診で腎機能の数値を指摘された人、あるいは慢性腎臓病として通院している人がサプリを検討するとき、まず見るべきは成分表の「ミネラル」だ。腎臓は、体に入った余分なミネラルを尿として捨てる出口にあたる。その出口が細くなっている状態で入口を広げれば、血液中の濃度は上がる方向に動く。効き目の議論に入る前に、この一点を押さえておきたい。
2なぜ気をつけるのか:出口が細くなる仕組み
マグネシウムは、体内で使われたあと主に腎臓から尿へ排泄される。腎機能が低下すると排泄が追いつかず、血中のマグネシウム濃度が上がりうる。これが高マグネシウム血症で、吐き気、脱力感、立ちくらみ、脈が遅くなる、傾眠といった形であらわれる。
この現象は理屈の上の話ではない。便秘薬として広く使われる酸化マグネシウム製剤については、重篤な高マグネシウム血症(死亡例を含む)の報告を受けて、医薬品医療機器総合機構(PMDA)から「適正使用に関するお願い」が繰り返し出されている。そこでは腎機能の低下した人と高齢の人でリスクが高いこと、そして便秘のある人では腎機能が正常でも通常用量以下でも起こりうることが示されている。医薬品ですらこの扱いである以上、同じミネラルをサプリから足すことは、慎重に見る価値がある。
カリウムも同じ構図になる。腎機能が低下すると排泄が追いつかず、高カリウム血症のリスクが上がる。こちらは不整脈につながりうるため、野菜ジュース・青汁・カリウム配合のサプリを「体にいいもの」として足す行為が、腎臓の弱い人では逆向きに働くことがある。
3具体的に注意したい組み合わせ
- マグネシウム配合の睡眠サプリ:GABAやグリシンとマグネシウムを組み合わせた複合製品は多い。マグネシウムの基礎で書いたとおり、健康な腎臓であれば余分は尿へ出ていく。腎機能が落ちているならこの前提が崩れる。
- 便秘薬(酸化マグネシウム)を飲んでいる人:ここがいちばん見落とされる。処方薬でマグネシウムを毎日とっている上に、サプリからも足せば二重取りになる。飲んでいる便秘薬の成分名を確認したい。
- 制酸剤・胃薬:マグネシウムやアルミニウムを含む市販胃薬がある。胃薬とサプリの飲み合わせも併せて確認したい。
- 降圧薬との重なり:腎機能低下と高血圧は併存しやすい。マグネシウムと降圧剤の関係は別記事にまとめた。
- たんぱく質系サプリ:腎臓の状態によっては、たんぱく質の摂取量に制限がかかることがある。高齢者とプロテインで触れたとおり、制限の指示が出ている人は自己判断で足さない。
- 当サイトの7成分について:GABA、L-テアニン、グリシン、クロセチン、ラフマ、ALA、ガセリ菌CP2305そのものについて、腎機能低下時の相互作用として確立した報告は見当たらない。ただし製品はたいてい複合だ。判定は成分名でなく、製品の成分表全体で行う。
4自己判断で足さない・止めない理由
腎機能は自覚症状が出にくい。だるさや吐き気が出たときには、すでに数値が動いていることがある。逆に、医師から処方されている酸化マグネシウムを「危ないらしい」と自分で止めれば、便秘そのものが悪化する。判断の材料になるのは、直近の血液検査で出ているeGFRやクレアチニンの値であって、体感ではない。
5どんなときに受診・相談すべきか
サプリを始めてから、吐き気、強い脱力感、立ちくらみ、脈が遅い感じ、いつもと違う眠気が続く場合は、様子を見ずに主治医・薬剤師に相談したい。腎臓の外来にかかっている人は、次の診察で成分表そのものを見せるのが早い。製品名だけでは、中に何が何ミリグラム入っているかまで医療者は判断できない。
6この記事のポイント
- 腎機能低下時の論点は成分の効き目でなく、排泄できるかどうか
- マグネシウムは腎臓から排泄される。出口が細ると血中濃度が上がりうる
- 酸化マグネシウム製剤には重篤例を受けた行政の注意喚起がある
- カリウムも同じ構図で、高カリウム血症は不整脈につながりうる
- 実害は単一成分でなく、複合サプリ+処方の便秘薬の二重取りで起きやすい
- 判断材料は体感でなく直近のeGFR。成分表を持って相談する
- 酸化マグネシウム製剤 適正使用に関するお願い(高マグネシウム血症)2015年10月/2020年8月:医薬品医療機器総合機構(PMDA, https://www.pmda.go.jp/files/000235889.pdf)
- 医薬品添付文書情報(酸化マグネシウム製剤ほか):PMDA(https://www.pmda.go.jp/)
- 酸化マグネシウム製剤の腎機能低下患者における血清マグネシウム値への影響:日本腎臓病薬物療法学会誌(J-Stage, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjnp/2/1/2_3/_pdf/-char/ja)
- 成分の安全性情報:国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報(HFNet, https://hfnet.nibiohn.go.jp/)
- 確認日 2026-07-27
飲んでいるサプリが自分に必要か、飲み合わせは大丈夫か。売る側でない薬剤師が、要るものは勧め、要らないものは正直に要らないと伝えます。初回はメールで無料。
薬剤師に相談する(初回無料)