制度解説

届出表示の読み方。「報告されています」が意味する本当のところ

睡眠系サプリの主要6成分と、機能性表示食品の届出の対応表。薬剤師が消費者庁のデータベースで1件ずつ照合した記録で、L-テアニンは届出番号B306、GABA(γ-アミノ酪酸)は届出番号H1209、グリシンは届出番号A42、クロセチン(クチナシ・サフラン由来)は届出番号F454、ガセリ菌CP2305株(L. gasseri CP2305)は届出番号F302、ラフマ由来ヒペロシド・ラフマ由来イソクエルシトリンは届出番号K568。届出表示は各届出者による表示であり、機能性表示食品は消費者庁長官の個別審査を受けたものではない。
図:睡眠系サプリの成分と機能性表示食品の届出の対応(消費者庁データベースで1件ずつ照合)
まず結論
  • 届出表示は「語尾」「対象」「条件」の三点で読む。ここに製品の正直な範囲が出る。
  • 「報告されています」は“断定していない”という制度のサイン。「効く」「治る」とは別物。
  • 広告のキャッチが派手でも、届出表示の枠を超えた効果はうたえない。表示が答え合わせになる。

1なぜ届出表示を読めると強いか

サプリ選びで失敗する一番の原因は、広告のイメージで買ってしまうことだ。だが機能性表示食品には、企業が「ここまでは言ってよい」と国に届け出た一文がある。それが届出表示で、製品の正直な上限を示す。ここを読めれば、広告がその枠を超えて盛っていないか、自分で答え合わせができる。

読むコツは三つに分かれる。順に見ていく。

2一つめ:語尾を見る

機能性表示食品の届出表示は、ほぼ「〜が報告されています」「〜に役立つ機能があります」で止まる。これは制度の定型で、臨床でそう報告された、という意味だ。言い換えると、断定を避けている。

だから「報告されています」を「効きます」「治ります」と読み替えてはいけない。逆に、広告で「必ず眠れる」「不眠が治る」と書いてあれば、それは届出表示の語尾を超えている=薬機法に触れる表現だと分かる。語尾は、盛りを見抜く最初のフィルターになる。

3二つめ:対象を見る

次に、何に対する機能かを見る。「睡眠の質」なのか「中途覚醒」なのか「血圧が高めの方」なのか。同じ成分でも、製品により対象が違う。たとえばGABAは、製品によって睡眠・血圧・ストレスと対象が分かれる(詳しくはGABAの記事へ)。

ここを読まずに成分名だけで選ぶと、目的とずれた製品を手に取りやすい。対象が、自分の悩みと合っているかを確かめる。

4三つめ:条件を見る

最後に、対象者や前提の条件を見る。「血圧が高めの方に適しています」「加齢などによる睡眠の質の低下が気になる方に」といった一文だ。これは、誰にでも効くという話ではない、という制度上の絞り込みになる。

自分がその条件に当てはまるかを確かめると、過度な期待をせずに選べる。

5やってはいけない読み替え

届出表示を読むとき、避けたい誤読が二つある。ひとつ、対象を病気に広げること。「睡眠の質」を「不眠症が治る」と読まない。ふたつ、複数製品の表示を足し算しないこと。睡眠用とストレス用を重ねれば二倍効く、という話ではない。表示はあくまで、その製品単体の届け出た範囲だ。なお「書ける」と「違法」の間が実は三段階に分かれていることは、薬機法の境界線マップで図にしてある。

6全文が書いてあっても、切り出せば問題になる

ここからは、行政がどういう物差しで広告を見ているかの話に移る。消費者庁は2020年3月に【事後チェック指針】という文書を出しており、同年4月から運用されている。機能性表示食品の広告のどこが景品表示法上まずいのかを、事業者向けに類型化したものだ。買う側にとっても、この物差しを知っていると読み方が一段はっきりする。

その中で、私が一番おもしろいと思うのが届出表示の引用に関する項目だ。指針は、届出表示の一部だけを切り出して強調する広告について、届出された機能性の範囲を逸脱した表示になり得ると書いている。しかも、容器包装でそれをやる場合は、届出表示の全文が同じ容器包装に書かれていたとしても、誤認を与える蓋然性があることに十分留意するように、とわざわざ念を押している。

つまり【全文がどこかに書いてあるから大丈夫】は成り立たない。パッケージの表と裏で言えば、裏の小さな全文が免罪符になるわけではなく、表の大きな一句のほうが判断される、という順序になる。

買う側の手順もここから決まる。大きな文字のキャッチを読んだら、必ず小さな届出表示の全文を探して、語尾・対象・条件の三点が削られていないかを突き合わせる。削られている一句がその製品の弱点だ。

7「個人の感想です」は打ち消しにならない

体験談についても、指針ははっきりしている。「個人の感想です」といった但し書きが読み手に認識されるものであったとしても、体験談で示された効果に係る打消しの効果は認められない、と書かれている。だから体験談は、但し書きを見て割り引くのではなく、体験談の中身そのものが届出表示の範囲を超えていないかで読む。

同じ扱いは医師や専門家の推奨にもかかる。推奨すること自体が直ちに問題になるわけではないが、推奨の内容が届出された範囲を逸脱していれば問題になり得るし、依頼して書かせたものを客観的な立場からの推奨のように見せる場合も同様だと列挙されている。肩書の重さで判断しない、という読み方の根拠がここにある。

8事業者がどう思っていたかは関係ない

もう一点、指針は判断の仕方も書いている。誤認される表示かどうかは、特定の文言や写真だけから受ける印象で決まるのではなく、表示全体から受ける印象で判断される。そして、顧客を誘引する効果を持つかどうかの判断は客観的になされるもので、事業者の主観的意図では判断されない、と明記されている。

挙げられている例が分かりやすい。届出内容が「肥満気味の方の内臓脂肪を減らすのを助ける機能性がある」であるのに、広告全体から、特段の運動や食事制限をすることなく誰でも容易に腹部の痩身効果が得られるという印象を受けるなら、それは範囲の逸脱にあたる、というものだ。個々の文言はどれも嘘を書いていなくても、全体の印象で決まる。

だから読むときも、一文ずつ粗探しをするより、その広告を通しで見たあと自分が何を期待したかを言葉にしてみるほうが早い。その期待が届出表示に書いていなければ、盛られている。

9この読み方が使えない範囲

線引きははっきりさせておく。ここまでの話は【機能性表示食品】に限った話だ。届出をしていない、いわゆる健康食品には届出表示そのものが存在しないので、語尾も対象も条件も突き合わせる相手がない。パッケージに機能性表示食品の記載と届出番号がなければ、この読み方は使えないと考えたほうがいい(制度の区分は機能性表示食品とはにまとめてある)。

それから、指針は景品表示法と健康増進法の話であって、医薬品的な効果効能そのものを扱う法律ではない。指針も、疾病の予防や治療を目的とした医薬品的効果効能の標ぼうは薬機法に抵触するおそれがあると別立てで触れているだけだ。薬機法と景表法は別の入り口で、どちらか一方を通れば安全という関係ではない。

最後に、指針の言い回しは一貫して「問題となるおそれがある」であって、違法確定ではない。具体的な適否は個別事例ごとに判断される、とも繰り返し書いてある。ここを「即アウト」と読み替えないほうが、かえって物差しとして長く使える。

10この記事のポイント


【監修】まさ(薬剤師・運営者/薬機法管理者/景表法第1級/コスメ薬機法管理者)

【出典】

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