夜中に足がつって目が覚める(こむら返り)。薬剤師が薬の関与と受診の目安を案内する
[監修確認] この記事は薬剤師(運営者)の最終確認を待っています。
- 夜中のこむら返りは加齢・脱水・冷えで起きやすくなりますが、頻発するなら【いま飲んでいる薬】を疑う価値があります。利尿薬・降圧薬・脂質異常症の薬・喘息の薬が関与しうると整理されています。
- 対処として広く使われる芍薬甘草湯には注意点があります。含まれる甘草が低カリウム血症(偽アルドステロン症)を起こすと、脱力やこわばりとして表れ、こむら返りが増える側に回ることがあります。頓用が原則で、連日の使用は本来の使い方ではありません。
- こむら返りを治すとうたえる機能性表示食品はありません。マグネシウムは不足を補うもので、つりを止める薬ではない前提で見てください。
1「年のせい」で片づける前に
眠っている最中、ふくらはぎが急に硬く縮んで激痛で飛び起きる。数十秒から数分でおさまるものの、その夜はもう寝つけない。これが週に何度も続く——中高年以降に増えるこの訴えは、有痛性筋けいれん、通称こむら返りと呼ばれます。
加齢で筋肉量が落ち、血流が悪くなり、冷えや脱水が重なると起こりやすくなる、というのが土台の説明です。ここまではよく語られます。ただ、薬剤師の立場から見ると、頻度が上がった人には土台の話だけでは足りない要素があります。飲んでいる薬です。
2薬が引き金になっていることがある
こむら返りが繰り返す背景として、糖尿病、肝臓の病気(肝硬変)、甲状腺の病気、そして服用中の薬が挙げられています。薬の側で名前が挙がるのは、降圧薬、利尿薬、喘息の薬、脂質異常症の薬(スタチン)などです。
とくに利尿薬は、体から水分とともにミネラルを出す働きを持つため、けいれんの起こりやすさに関わりえます。夜間頻尿の相談と重なる領域でもあるので、利尿薬と睡眠サプリの整理と、症状が夜のトイレ中心なら夜間頻尿の切り分けも併せて見てください。
見るべき順番はこうです。こむら返りが増えた時期と、薬が始まった時期や量が変わった時期が重なっていないか。カレンダーで突き合わせるだけで、相談の精度が上がります。そして重なりが見えても、薬を自分の判断で止めない。伝えるべきは医師と薬剤師で、代替や調整はその先の話になります。
3芍薬甘草湯を使っている人へ(ここが最重要)
こむら返りに対して芍薬甘草湯が使われることは多く、実際に頓用で用いられる薬です。ただし、ここには薬剤師として必ず添えたい注意があります。
芍薬甘草湯には甘草(かんぞう)が含まれ、その成分グリチルリチン酸は、体内でカリウムの排泄を増やす方向に働きます。結果として低カリウム血症、いわゆる偽アルドステロン症を起こすことがあり、厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルにも項目が立てられています。
問題は、その初期症状が【手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、こわばり】として表れる点です。つまり、こむら返りを抑えるために飲み続けた結果、こむら返りに似た症状が増えるという逆転が起こりえます。「効かなくなったから量を増やす」という判断は、この場合いちばん危ない方向に進みます。
芍薬甘草湯は甘草の量が多い処方で、頓用が原則です。毎日の常用は本来の使い方ではありません。服用中にこむら返りが増えた、むくみが出てきた、力が入りにくい、血圧が上がってきた——このいずれかがあれば、いったん中止して主治医・薬剤師に伝えてください。ほかの漢方薬を併用している場合、甘草が重複して合計量が増えていることもあります。漢方と睡眠、甘草の注意は睡眠の漢方の記事にも整理しました。
4マグネシウムの位置づけ
足がつるとマグネシウムを勧める情報は多く見かけます。整理しておくと、マグネシウムは筋肉と神経の働きに関わるミネラルで、不足していれば補う意味があります。ただし、足りている人が足しても効果は期待しにくく、とりすぎは別の負担になります。詳しい役割と食事からの摂り方はマグネシウムと睡眠にまとめてあります。
そして制度の話として、こむら返りや足のけいれんを対象にした機能性表示食品の届出はありません。「飲めば足がつらなくなる」とうたう健康食品があれば、それは届出の範囲を超えた表現だと考えて距離を置くのが安全です。
もう一点、実務上の注意があります。腎臓の働きが落ちている人は、マグネシウムやカリウムが体にたまりやすく、サプリで補う判断そのものに注意が要ります。該当する場合は自己判断で始めず、腎機能とサプリを先に読んでください。
5「つる」のか「むずむずする」のか
似て見えて別の状態があります。こむら返りは筋肉が硬く縮んで痛むもので、数十秒から数分でおさまります。対して、脚の奥がむずむずして動かさずにいられない、動かすと楽になる、というものは、むずむず脚症候群という別の状態のことがあります。背景も対処も違うため、こちらに心当たりがあるなら脚がむずむずして眠れないのほうが近い入口です。
6受診を考える目安
次に当てはまるなら、生活の工夫やサプリで様子を見続けず、受診で背景を確かめたいところです。週に何度も夜中のこむら返りで目が覚める。片脚だけに起こり、その脚のむくみ・色の変化・歩くと痛むといった症状を伴う(血管の問題が隠れていることがあります)。糖尿病・肝臓の病気・甲状腺の病気・腎臓の病気を指摘されている。薬が増えた、あるいは変わった時期と重なっている。芍薬甘草湯を毎日続けている。
受診先は、まずかかりつけの内科が入口になります。薬の一覧(お薬手帳)を持っていくと、それだけで切り分けが進みます。市販のサプリや漢方を使っている場合も、そこに書き足して見せてください。こむら返りは原因が特定できれば手が打てる状態なので、「年だから」で抱え込まないほうが結果的に早く楽になります。
- 偽アルドステロン症(甘草・グリチルリチンによる低カリウム血症)の症状と対応:厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル「偽アルドステロン症」(https://www.pmda.go.jp/files/000245267.pdf)
- 漢方製剤による低カリウム血症・偽アルドステロン症の事例:日本病院薬剤師会 プレアボイド広場(https://www.jshp.or.jp/information/preavoid/43-9.pdf)
- 有痛性筋けいれん(こむら返り)の背景疾患・関与しうる薬剤:医薬品医療機器総合機構(PMDA)医薬品添付文書情報(https://www.pmda.go.jp/)ほか一般向け医療情報
- 機能性表示食品の届出内容:消費者庁 機能性表示食品 届出情報検索(https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/)
飲んでいるサプリが自分に必要か、飲み合わせは大丈夫か。売る側でない薬剤師が、要るものは勧め、要らないものは正直に要らないと伝えます。初回はメールで無料。
薬剤師に相談する(初回無料)