制度解説

睡眠の漢方(酸棗仁湯・抑肝散など)は効くのか。薬剤師が向く人と甘草の注意を整理する

まず結論
  • 漢方は「自然だから安全」ではなく、れっきとした薬。飲み合わせも副作用もあるという前提で見る。
  • 不眠の漢方は即効の睡眠薬とは別物で、体質や不眠のタイプに合わせて選ぶ。疲れて眠れないなら酸棗仁湯、神経の高ぶり・イライラが強いなら抑肝散、というように向く人が違う。
  • 多くの漢方に入っている甘草は、むくみ・血圧上昇・カリウム低下(偽アルドステロン症)を起こすことがある。とくに高齢の方、長く飲む場合、血圧や利尿の薬を飲んでいる場合は要注意。

1「漢方=サプリの延長」ではない

睡眠に悩んでサプリを調べていると、漢方薬が候補に挙がることがあります。ただ、漢方はサプリ(機能性表示食品)とも、市販の睡眠改善薬とも性格が違います。生薬を組み合わせた医薬品であり、効く人には効く一方で、副作用も飲み合わせもあります。「自然由来だから安全」という思い込みが、いちばん危ない入口になります。

西洋の睡眠薬のように「飲めばすぐ眠くなる」ものでもありません。体質や不眠のタイプに合わせて、時間をかけて体調を整えていく——この考え方の違いを先に押さえておくと、選び方を誤りません。

2不眠に使われる主な漢方と、向く人

漢方は「不眠」という症状だけでなく、その人の体力や体質、ほかの不調と合わせて選びます。代表的なものを挙げます。

酸棗仁湯(さんそうにんとう)は、心身が疲れているのに眠れない、という不眠に使われます。鎮静的に働き、高齢の方の不眠にも用いられますが、睡眠導入剤のような即効性を期待するものではありません。

抑肝散(よくかんさん)は、神経の高ぶり、イライラ、怒りっぽさが強く、それで眠れないタイプに向きます。神経の緊張を緩める方向に働き、高齢の方の気分の高ぶりに使われることもあります。

加味帰脾湯(かみきひとう)は、虚弱で疲れやすく、不安や気分の落ち込みを伴う不眠に使われます。

どれが合うかは自己判断が難しいので、市販の漢方を試すにしても、薬剤師に体質と今の状態を伝えて選ぶのが安全です。ストレスで眠れないときの全体像はストレスで眠れない夜の入口も合わせて見てください。

3いちばんの注意点は「甘草」

漢方の飲み合わせで、薬剤師がまず気にするのが甘草(かんぞう)です。酸棗仁湯をはじめ多くの漢方に含まれ、長く飲んだり量が多かったりすると、むくみ・血圧上昇・体のだるさ・カリウムの低下(偽アルドステロン症)を起こすことがあります。

とくに注意したいのが、次の場合です。高齢の方、漢方を長く飲み続ける場合、そして血圧の薬(とくに利尿薬)を飲んでいる場合。利尿薬とカリウム低下が重なると影響が出やすくなります。むくみや血圧の上がり方が気になったら、続けずに受診してください。マグネシウムと血圧の薬の関係はマグネシウムと降圧剤の飲み合わせにも通じる考え方です。

複数の漢方や、漢方と市販薬を重ねると、甘草が知らないうちに増えることもあります。飲んでいるものは、お薬手帳などで薬剤師に一度見てもらうのが確実です。

4睡眠薬・サプリとの立ち位置の違い

漢方は医薬品で、市販の睡眠改善薬(ジフェンヒドラミンなど)や処方の睡眠薬とは成分も考え方も違います。三つの違いは睡眠薬・改善薬・サプリの違いの記事に整理しました。睡眠薬を飲んでいる高齢の方が漢方を足すことを考える場合は、自己判断で足さず、まず処方元に相談してください(高齢者と睡眠薬の記事)。

漢方は、合う人には生活を支える選択肢になります。ただ「薬である」という前提を外さず、甘草と飲み合わせに気を配りながら、専門家と選ぶ。ここを守れば、遠回りに見えて安全で確実です。


【監修】まさ(薬剤師・運営者/薬機法管理者/景表法第1級/コスメ薬機法管理者)

【出典】