制度解説

広告のグラフは、どこから盛りになるのか。国が挙げた六つと、業界が「やってよい」と書いた四つ

まず結論
  • 消費者庁は、試験結果やグラフの使用が誇大表示に当たるおそれのある場合を【六つ】挙げている。グラフを載せること自体は禁止されていない。
  • 業界の自主基準のほうには、逆に「やって差し支えない加工」が書いてある。エラーバーを消すことも、棒グラフを折れ線に変えることも、そこでは許容されている。
  • 線が引かれているのは見た目の整形ではなく、【軸のスケール】と【どのデータを選んだか】のほうだ。買う側がその場で確かめられるのも、そこに絞られる。

1グラフがあると、人は数字を確かめなくなる

商品ページを下へ送っていくと、たいてい一枚のグラフが出てくる。摂取した群としなかった群が並び、片方の線だけが下がっている、あの図だ。

グラフは強い。文章で「改善が報告されています」と書かれるより、下がっている線を一本見せられたほうが、はるかに納得してしまう。だが、そこで確かめるのをやめてしまうのも、たいていグラフのところだ。何人に、どれくらいの期間、どういう飲み方をさせた結果なのか。そこを読まずに図の形だけを受け取っている。

この記事では、国がどこに線を引いているのかを原文で確認する。結論を先に言うと、グラフを載せること自体はまったく問題にされていない。

2消費者庁は、誇大表示になりうる六つを挙げている

消費者庁の「特定保健用食品に関する質疑応答集」という通知がある。その問53が、まさにこの話を扱っている。問いの立て方は「広告において試験結果やグラフを使用することはできるのか」だ。

答えの書き出しは、こうなっている。

広告において試験結果やグラフを使用することが、直ちに、誇大表示に該当することにはならないが、以下のような場合には、誇大表示に該当するおそれがあるので留意すること。

そのうえで六つが並ぶ。原文のまま引く。

・出典や試験条件(対象者、人数、摂取方法等)を適切に表示しないもの
・極端なグラフのトリミング(スケール調整等)や、作為的なデータの抽出を行ったもの
・グラフ内やその周辺に、試験内容と関係のない表示を行ったもの
・視認性が十分に確保されない短時間のテレビコマーシャル等の広告における試験結果やグラフの使用
・国の統計データに自社で作成したデータを結び付け、自社データが国の統計データの一部であるかのように表示したもの
・複数の試験結果があるにもかかわらず、特定の試験結果(有意差の大きい試験結果)のみを使用する場合

六つを眺めると、性格が二つに分かれているのが分かる。前半の三つは【そのページを見れば分かる】もので、後半の三つは【見ただけでは分からない】ものだ。この差が、買う側にとってそのまま実用の境目になる。

3買う側がその場で確かめられるのは、二つだけ

正直に書くと、六つのうち一般の買い手が自力で判定できるのは二つしかない。

一つめは【出典と試験条件が、そのグラフと同じ画面にあるか】。対象者が誰で、何人で、どう摂取して、どれくらいの期間だったか。ここが書かれていなければ、グラフの形を読む意味がない。何を測った線なのか分からないからだ。

二つめは【グラフの周りに、その試験と関係のない表示が混ざっていないか】。図のすぐ横に受賞歴が置かれていたり、別の成分の説明が並んでいたりすると、試験結果とは無関係な情報がグラフの信用を借りる形になる。消費者庁が三つめに挙げているのは、この配置のことだ。

残りの四つは、外からは追えない。複数の試験があったのかどうかを買う側が知る方法はないし、軸がどこまで切り詰められているかも、元データを見なければ確かめようがない。だから【確かめられないものは、確かめられないと扱う】。グラフが一枚あるからといって検証済みだと受け取らない、という一点だけでよい。

4「やってはいけない加工」と「やってよい加工」は、分かれている

ここが、この記事でいちばん書いておきたい部分だ。

問53だけを読むと、グラフには一切手を触れてはいけないように見える。トリミングも抽出も駄目だと書いてあるからだ。ところが業界側の基準を開くと、話はそう単純ではない。

機能性表示食品については、健康食品産業協議会などの業界団体が「機能性表示食品」適正広告自主基準というものを作っている。その第4版に、【グラフを使用する場合の注意事項】という項目があり、そこには避けるべきことと並んで、差し支えないことが明記されている。

差し支えないとされているのは、たとえば次のようなものだ。

②見やすさに配慮して、目盛単位の変更・エラーバーの削除・線の太さの変更・色の変更等は差し支えない。
③消費者の理解を助けるために、グラフ内・その近くに試験内容と結果の説明・時間経過を表す矢印・事実に基づく解説を加えることは、差し支えない。
④表からグラフへの変更・グラフの種類の変更(棒グラフを折れ線グラフに変更する等)は、差し支えない。

エラーバーを消してよい、と書いてある。棒グラフを折れ線に描き替えてもよい、とも書いてある。論文の図をそのまま貼らなければならない、という話ではないわけだ。

では何が駄目なのか。同じ項目の一つめに、こうある。

①消費者に誤認を与えるような極端な軸のスケール変更・トリミングは避けること。

そして五つめに、抽出の話が出てくる。

⑤層別解析の結果に男女で差がある等の場合は、効果を大きく見せるために一方のみを取り上げる等はしないこと。

並べて読むと、線がどこにあるかがはっきりする。【見やすくするための整形は許される。効果を大きく見せるための操作は許されない】。色や太さや種類は前者で、軸のスケールとデータの選び方は後者だ。

この区別は、買う側にとってもそのまま使える。グラフが綺麗に整えられていること自体は、疑う理由にならない。見るべきなのは縦軸の目盛りがどこから始まっているかと、都合のよい一部分だけを抜いていないか、という二点になる。

5そのグラフは、この製品を飲んだ人のデータとは限らない

もう一つ、グラフの手前で見落とされやすい話がある。

機能性表示食品の届出には、大きく二つの型がある。その製品そのもので臨床試験をした型と、成分についての論文を集めて評価した型(システマティックレビュー)だ。詳しくは機能性表示食品とは何かのほうで扱っている。

問題は後者で、届出の根拠が成分の論文であるとき、広告に載るグラフもその論文から取られることになる。つまり【その製品を飲んだ人の結果ではない】。自主基準は、この点をかなり具体的に書いている。引用するグラフや図が最終製品を用いた試験のデータであると誤認されないよう十分に配慮すること、とあり、そのうえで明記の例まで挙げている。

「システマティックレビューの対象となった論文です。本製品を用いた臨床試験ではありません」
「最終製品を用いた臨床試験のデータではなく、機能性関与成分のデータです」

さらに、なぜその論文を選んだのかという理由も書くこととされていて、その例も示されている。

「システマティックレビューの対象となった論文のうち、代表的な1報を事例として提示しています」

こういう一文がグラフの近くに添えてある商品ページは、この点について丁寧なほうだと判断してよい。逆に、届出の型がシステマティックレビューなのにグラフだけが大きく置かれていて、成分のデータである旨がどこにも書かれていなければ、読み手は製品を飲んだ結果だと受け取る。書いていないことによって誤認が生まれる、という構図になる。

届出の型は、届出番号から消費者庁のデータベースを引けば確認できる。手間はかかるが、グラフの意味が変わる情報なので、気になった製品では一度引く価値がある。

6責任を負うのは誰か。条文には「何人も」と書いてある

この話には、買う側の読み方とは別に、作る側の責任という面がある。

根拠になっている健康増進法第65条第1項は、こう始まる。

何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。

主語が「何人も」になっている。そして先ほどの質疑応答集にも、この点を正面から扱った問いがある。問50は、表示規制の対象となる者について、製造業者や販売業者のみならず、新聞社、雑誌社、放送事業者等の広告媒体事業者等も対象となり得る、としている。

グラフを実際に作るのは、多くの場合メーカー自身ではない。制作会社であり、代理店であり、掲載する媒体だ。条文の書き方からすると、作っただけ・載せただけという整理が当然に通るわけではない、ということになる。

買う側にとっては直接の実用はない話だが、知っておくと見え方が一つ変わる。グラフの体裁が揃っている商品ページは、それだけ多くの手が入っているということでもある。

7ここは混ぜないでほしい

線を引いておきたいことが、三つある。

一つめ。ここまで引いてきた質疑応答集は、特定保健用食品(トクホ)についての通知だ。名宛人はトクホであって、すべてのサプリに直接かかる文書ではない。ただし、そこで解釈されている健康増進法第65条第1項のほうは、条文が「食品として販売に供する物」と書いていて、トクホに限っていない。だから機能性表示食品やいわゆる健康食品の広告についても、同じ条文の解釈として参照される関係にある。直接適用と参照は別の話なので、そこは分けて受け取ってほしい。

二つめ。同じ質疑応答集の問51・問52が扱っている「許可表示」の枠組みは、国が個別に許可を出すトクホ固有の仕組みだ。機能性表示食品は届出であって許可ではないので、許可表示についての記述をそのまま届出表示に置き換えないでほしい。表示そのものの読み方は届出表示の読み方で別に扱っている。

三つめ。自主基準は業界団体が作ったもので、法令そのものではない。だから「自主基準に違反している」ことと「法律に違反している」ことは同じではない。この記事で自主基準を引いたのは、そこに【許容される加工の範囲】が書かれているからで、その部分は国の通知には出てこない。禁止の根拠として使っているわけではない。

最後にもう一つ。この記事は数字の見せ方の話であって、満足度やランキングの数字とは別の制度の話だ。あちらは景品表示法のアンケート調査の話で、こちらは健康増進法の試験データの話になる。どちらも「その数字は何を測ったのか」を問うている点では似ているが、根拠になる法律も見るべき場所も違う。

8この記事のポイント

数字の根拠そのものの読み方は「満足度94%」は誰に聞いた数字なのか、箱に書かれた文章の読み方は届出表示の読み方で続けている。事業者側の表示チェックの入口はメーカーの皆様へにまとめた。


【監修】まさ(現役で通販事業の顧問を務める薬剤師/薬機法管理者・景表法第1級)

【出典】

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