制度解説

機能性表示食品とは。トクホとの違いは、箱に「国の評価を受けていない」と書く義務があるかどうかだ

睡眠系サプリの主要6成分と、機能性表示食品の届出の対応表。薬剤師が消費者庁のデータベースで1件ずつ照合した記録で、L-テアニンは届出番号B306、GABA(γ-アミノ酪酸)は届出番号H1209、グリシンは届出番号A42、クロセチン(クチナシ・サフラン由来)は届出番号F454、ガセリ菌CP2305株(L. gasseri CP2305)は届出番号F302、ラフマ由来ヒペロシド・ラフマ由来イソクエルシトリンは届出番号K568。届出表示は各届出者による表示であり、機能性表示食品は消費者庁長官の個別審査を受けたものではない。
図:睡眠系サプリの成分と機能性表示食品の届出の対応(消費者庁データベースで1件ずつ照合)
まず結論
  • 「国のお墨付きではない」は解説者の意見ではない。法令が、箱にそう書けと文言を指定している。
  • 機能性表示食品が想定している読者は【疾病に罹患していない者】で、未成年者・妊産婦・授乳婦は定義から外れている。
  • 義務表示の中に「医薬品を服用している者は医師、薬剤師に相談」が入っている。制度は最初からその相談を前提に組まれている。

1この記事の立ち位置

機能性表示食品を説明する記事はいくらでもある。ただ、その多くは「国が審査していない制度です」と書いて終わる。そこで止まると、なぜそう言い切れるのかが読者に渡らない。

ここでは、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の条文と、消費者庁の手引きの原文に当たって確認する。結論から言うと、お墨付きかどうかは解釈の問題ではなく、【箱に何と書くことが義務づけられているか】で決着がついている。

2三つの「機能性が書ける食品」を、条文で仕分ける

保健機能食品には三種類ある。効き目の優劣ではなく、確からしさを誰がどう担保するかが違う。

【特定保健用食品(トクホ)】は、健康増進法第43条第1項に基づく許可を受けた食品だ。食品表示基準第2条第1項第九号は、特定保健用食品を、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令第2条第1項第5号に規定する食品と定義している。国が製品ごとに許可を出す構造になっている。

【機能性表示食品】は、同条第十号に定義がある。原文はこうだ。疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を除く。)を対象として、機能性関与成分によって健康の維持及び増進に資する特定の保健の目的(疾病リスクの低減に係るものを除く。)が期待できる旨を科学的根拠に基づいて容器包装に表示をする食品——そして、消費者庁長官への届出などの要件を全て満たすもの。

【栄養機能食品】は同条第十一号。別表第11の第1欄に掲げる栄養成分の補給を目的として摂取する者に対し、この府令に従って表示する食品だ。錠剤やカプセル剤等の形状の加工食品では、カリウムが対象から外れている。

三つは重なり合わない。機能性表示食品の定義には除外規定があり、特別用途食品、栄養機能食品、アルコールを含有する食品、そして過剰摂取が国民の健康に影響を与えるとされる栄養素の過剰摂取につながる食品は、機能性表示食品になれない。同じ製品がトクホでもあり機能性表示食品でもある、ということは起こらない。

3決定的な違いは、箱に書かされる一文にある

ここがこの記事の核心だ。三つの制度の差は、パンフレットの説明文ではなく、法令が指定した義務表示に現れている。

【機能性表示食品】には、消費者庁の手引きが定める義務表示として、次の文言をそのまま書くことが求められている。「本品は、特定保健用食品と異なり、機能性及び安全性について国による評価を受けたものではありません。届け出られた科学的根拠等の情報は消費者庁のウェブサイトで確認できます。」

【栄養機能食品】にも、食品表示基準が同種の文言を指定している。「本品は、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」

つまり、三つのうち二つは、【自分は国の審査を受けていない】と自ら名乗ることを法令に命じられている。特定保健用食品だけが、その一文を書かなくてよい。

この構造を知っていると、広告の読み方が変わる。「消費者庁認可」「国が認めた成分」といった売り文句を掲げた機能性表示食品があったとしたら、その製品は、自分のパッケージ裏面に印刷された義務表示と正面から矛盾していることになる。どちらが正しいかは、箱の裏を見れば分かる。

誰が確からしさを担保するか/箱に何と書かされるか 特定保健用食品 健康増進法 第43条第1項 国が製品ごとに【許可】 疾病リスク低減表示が できるのはここだけ 免責の一文は不要 審査を受けているため 機能性表示食品 食品表示基準 2条1項十号 事業者が【届出】 販売開始の60日前まで (新規成分等は120日前) 「国による評価を 受けたものではありません」 と書くことが義務 栄養機能食品 食品表示基準 2条1項十一号 規格基準型(届出も不要) 別表第11で下限と上限、 注意事項まで定型指定 「消費者庁長官による 個別審査を受けたもの ではありません」と書く義務 三つのうち二つは、自ら「国の審査を受けていない」と名乗ることを法令に命じられている。免責文言を書かなくてよいのは特定保健用食品だけ。 出典:食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条第1項第九号〜第十一号および別表、消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」を基に作成

4想定されている読者は「病気ではない人」だ

条文をもう一度読む。機能性表示食品の定義は、対象を【疾病に罹患していない者】と書いている。しかも未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む)、授乳婦は、その対象からさらに除かれている。

これは注意書きではなく、制度の定義そのものだ。だから義務表示にも、「本品は、疾病に罹患している者、未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を対象に開発された食品ではありません。」という一文を入れることが求められている。

そして定義には、もう一つ除外がある。特定の保健の目的から【疾病リスクの低減に係るもの】が外されている。疾病リスクの低減を表示できるのはトクホの枠組みであって、機能性表示食品ではない。ここを越えた表現は、届出の範囲を超えるだけでなく、薬機法の側でも問題になる(薬機法の境界線マップ)。

5義務表示に「薬剤師に相談」が書いてある

このサイトを読んでいる人の多くは、何らかの薬を飲んでいるはずだ。その人にとって、いちばん実用的な事実がここにある。

機能性表示食品の義務表示には、次の項目が含まれている。疾病に罹患している者は医師、医薬品を服用している者は医師、薬剤師に相談した上で摂取すべき旨。さらに、「体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。」という文言も指定されている。摂取上の注意事項についても、医薬品や他の機能性関与成分との相互作用、過剰摂取などを、成分の安全性に関する科学的根拠を踏まえて具体的に書くこととされている。

つまり、【薬を飲んでいる人が薬剤師に相談する】という動きは、消費者が気を利かせてやる余計な一手間ではない。制度がそれを前提に設計していて、箱にもそう書かせている。持病があってサプリを検討しているなら、遠慮する場面ではないと考えてほしい。

薬局で相談するときは、製品名だけでなく【関与成分名と一日当たりの摂取目安量】、そして飲んでいる薬の一覧を持っていくと話が早い。届出番号が分かれば、その場で消費者庁のデータベースを引いて、何をどれだけ摂ることになるのかを確認できる。

6箱の裏に並ぶ文言は、メーカーの親切ではない

ここまでを踏まえると、パッケージ裏面の見え方が変わる。機能性表示食品に書かれている次のものは、いずれも法令が求めている表示だ。

メーカーが謙虚だからこう書いてあるのではなく、これを書かなければ機能性表示食品として売れない。逆に言えば、これらが見当たらない製品は、機能性表示食品ではないか、表示に問題があるかのどちらかになる。最後の項目——【表示内容に責任を有する事業者の電話番号】が必ずあることは、覚えておくと役に立つ。何かあったときの連絡先が、制度上必ず箱に載っている。

7届出制は「根拠ゼロ」ではない。ただし強さに幅がある

誤解のないように補っておく。届出制だからといって、資料を出さなくてよいわけではない。安全性と機能性の科学的根拠、生産・製造および品質管理の体制、健康被害の情報収集体制などを届け出る必要があり、その内容は消費者庁のデータベースで公開される。届出は販売開始日の60日前までに行うこととされ、届出のない機能性関与成分などで確認に時間を要すると消費者庁長官が認める場合は120日前までとされている。

一方で、根拠の強さには幅がある。最終製品で臨床試験を行ったものもあれば、成分についての研究レビューで足りるとしたものもある。だから一律に「効く」とまとめるのは雑で、届出ごとに見るしかない。読み方は届出表示の読み方で続ける。睡眠に関しては、届出番号を照合済みの製品を悩み別の横断比較表にまとめてあるので、先に絞ってから気になった一本を自分で引き直すのが早い。

なお、紅麹の事案を受けて、この制度は届出後の側も動いている。健康被害の情報提供が義務化され、2026年9月1日からはGMPに基づく製造管理が届出者の遵守事項になっている(紅麹問題のあと、制度は何が変わったのか)。

8この記事が扱っていない範囲(線引き)

一つ、ここで見たのは食品表示基準という表示のルールであって、個別の製品が効くかどうかの評価ではない。制度の枠と、中身の当たり外れは別の話だ。

二つ、いわゆる健康食品・サプリメントの大半は、この三類型のどれでもない。保健機能食品でない食品は、そもそも機能を表示できない。棚に並んでいるものが全部この記事の枠に入るわけではない。

三つ、栄養機能食品の上限・下限や注意事項の具体的な数値は成分ごとに別表で決まっているため、ここでは個別の値を挙げていない。自分が飲むものについては、成分名で別表を確認するか、薬剤師に尋ねてほしい。

9この記事のポイント


【監修】まさ(現役で通販事業の顧問を務める薬剤師/薬機法管理者・景表法第1級)

【出典】

そのサプリ、要る?要らない?

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