「満足度94%」「ランキング第1位」は、誰に聞いた数字なのか
[監修確認] この記事は薬剤師(運営者)の最終確認を待っています。
- 「満足度○%」の調査には、その商品を使ったことがない人が答えているものが実在する。
- 見分ける場所は数字の横ではなく、小さく書かれた注記のほうにある。
- 注記に「イメージ調査」「利用有無は聴取していません」とあれば、その数字は使用者の評価ではない。
1数字そのものより、その下の一行を見る
睡眠サプリの商品ページを開くと、たいてい上のほうに数字が並んでいる。満足度94%、ランキング第1位、3冠達成。成分の説明よりも先に目に入る。
この数字を疑ってかかる必要はない。ただ、【何を測った数字なのか】は、書いてある場所が決まっている。数字の横ではなく、たいてい画面のずっと下、小さい文字の注記のほうだ。そしてそこを読むと、思っていたものと違うことがある。
消費者庁が2024年9月26日に公表した調査報告書は、この「思っていたものと違う」が実際にどれくらい起きているかを、広告を集めて数えた資料だ。ここに書かれていることは、買う側がそのまま使える。
2消費者庁は広告368件を集めて分類した
調査は2024年3月から9月にかけて行われた。集められた表示は合計368件で、内訳は「No.1表示」が275件、「高評価%表示」が93件になっている。
高評価%表示というのは、報告書がこの調査のために置いた呼び名で、「医師の○%が推奨しています」のように、順位ではなく割合で第三者の評価を示すもののことだ。順位を競っていないだけで、他人の主観的な評価を売り文句にしている点は同じなので、同じ調査の対象に入れたと説明されている。
指標に使われていた言葉を分類すると、No.1表示では【満足度】が71件で最も多かった。顧客満足度、品質満足度、コスパ満足度、といった形だ。高評価%表示のほうは【おすすめ・推奨】が32件で最も多い。
つまり、いま広告で最もよく使われている売り文句は、売上や価格のような数えられる事実ではなく、【誰かがどう感じたか】のほうだということになる。
3買う側は「使った人が答えた」と受け取っている
報告書は、消費者1,000名にアンケートも行っている。実際の広告に近いサンプルを見せて、どう受け取ったかを聞いたものだ。
「顧客満足度No.1」と書かれた表示について、【実際にその商品を使った人に調査していると思う】と答えた人は56.8%だった。「人気No.1」では57.7%。同じ表示を見て「同じ種類の他社商品より優れていると思う」と答えた人は、顧客満足度で55.5%、人気で53.9%になっている。
報告書はこの二つの数字が近いことに触れて、実際の利用者の評価で1位なのだと受け取るからこそ、他社より優れていると受け取る、という関係があるとみている。順序が逆ではない。信用の出どころは「使った人が言っている」という部分にある。
「医師の90%が推奨」のほうも同じ構造になっていた。この表示を見て【回答者が医師だと確認していると思う】と答えた人が48.7%、【品質・内容に関する客観的なデータをもとに調査していると思う】が46.5%。半数近くが、裏で医師の確認とデータの突き合わせが行われていると考えている。
4実際には、使ったことがない人が答えている調査がある
ここからが本題になる。報告書は、広告主16社への聞き取りも行っていて、そこで「イメージ調査」と呼ばれる方法の中身が説明されている。
イメージ調査というのは、アンケートの回答者に、対象の商品と比較対象の各社のウェブサイトのURLを見せ、そのサイトを見た印象で答えてもらう調査のことだ。報告書は、回答者は【対象商品や比較対象の商品の利用経験の有無を問わずに集められる】と書いている。
質問文の例も載っている。
ご覧いただいたサイトの中で、「サポートの手厚さ満足度が高い○○」だと思うものを、すべて選んでください。
サイトを見た人が、使ったことのない商品について「満足度が高そう」と思ったものを選ぶ。それが「満足度No.1」の中身になっている場合がある、ということになる。
報告書は景品表示法の考え方として、満足度は【その商品を実際に使ったことがある人でなければ適切に判断できない】と述べ、利用したことがない人を調査対象にしていたり、利用経験の有無を確認せずに対象者を選んでいる場合は、合理的な根拠に基づいているとはいえず問題となるおそれがある、としている。
5広告を出した側も中身を知らなかった
この記事でいちばん伝えたいのは、ここだ。
報告書の聞き取り対象になった広告主15社のうち、調査の中身を把握していたのは【1社だけ】だった。把握していたかを聞かれたのは、回答者がどんな質問に答えていたか、比較対象としてどの企業が選ばれていたか、回答者は自社サイトのどこを見て答えていたか、といった項目だ。
実際の回答として、こうしたものが載っている。
イメージ調査であることは認識していたが、実際のアンケート回答画面は見たことがない。回答者に対して当社のウェブサイトのどの部分を見せていたのかも不明である。
なぜ確認しなかったのかについては、調査会社を信頼していた、聞いても分からないので任せていた、他社も同じ調査会社を使っていたので問題ないと思っていた、という回答が多かったと書かれている。
費用は1フレーズあたり10万円から数十万円が多い。調査会社の勧誘文句として報告書が挙げているのは、【1度調査を行えばランニングコストはかからない】【結果が悪ければ費用は発生しない・返金する】【1位が獲れるまで追加費用なしで再調査する】といったものだ。
最後の一つは、報告書自身が別の箇所で、1位になるまで調査を繰り返す、1位になった時点で調査を終了するといった結論ありきの調査は合理的な根拠とはいえない、と名指ししている方法にあたる。
そのうえで報告書は、第三者が調査を行っていたとしても【責任は広告主にある】と明記している。調査会社に任せていたから知らなかった、では通らないという整理になっている。
6注記があっても、数字は救われない
ここが実務として一番効く部分だと考えている。
報告書は、集めた広告の中に実際にあった注記の例を三つ挙げている。
① サイトイメージ調査
② 本調査はサイトのイメージをもとにアンケートを実施しています。
③ 本ブランドの利用有無は聴取していません。
そして、これらの注記があったとしても、「顧客満足度No.1」という表示内容と調査結果が適切に対応していないことに【変わりはなく】、問題となるおそれがある、と書いている。
小さく正直に書いてあるのだから許される、という話にはなっていない。比較対象の選び方についても同様で、注記があっても、記載位置・文字の大きさ・文字の色などから一般消費者にとって明瞭でない方法で書かれていれば、適切に対応しているとはいえない、とされている。
買う側の実用に落とすと、読み方が一つ決まる。【注記を見つけたときに、対応済みの証拠として読まない】ということだ。「イメージ調査です」と書いてあったら、それは丁寧な会社の証ではなく、この数字は使用者の評価ではないという意味になる。安心材料ではなく、内容の説明として読む。
7「〜と思う」なら大丈夫、でもない
報告書には、広告を出す側の言い分も載っている。「利用したい○○No.1」「コスパが良いと思う◇◇No.1」のように、「〜したい」「〜と思う」という言い方にしておけば、実際の利用者に調査したかのような表示にはならないと考えていた事業者がいた、という部分だ。
ところが同じ報告書のアンケートでは、「利用したい」と書かれた表示を見て実際の利用者に調査していると思った人が約5割、「コスパが良いと思う」でも約5割いる。報告書は、こうした言い回しでも、表示の内容によっては実際の利用者に調査した結果1位であったかのように示す表示に当たる場合がある、としている。
語尾を弱めても、受け取られ方は変わっていない。
8睡眠サプリで、この話が効きやすい理由 [監修確認]
睡眠は、自分が飲んだ結果を自分で判定しにくい領域だと考えている。血圧のように数字が出るわけではなく、よく眠れた気がするかどうかは、その日の疲れ方や気分にも左右される。眠れなかった日のことは覚えているが、普通に眠れた日は記憶に残らない。
自分の判断に自信が持てないとき、人は他人の評価を頼りにする。報告書のアンケートでも、購入したい商品の知識があまりない場合、他社との違いが分からない場合、初めて購入する場合には、いずれも5割を超える人がNo.1表示を参考にすると答えている。
睡眠サプリは、この条件にきれいに当てはまる。だから満足度の数字が効く。効くからこそ、その数字が何を測ったものかを一度だけ確認する価値がある、という順序になる。
確認は難しくない。商品ページを下までスクロールして、数字の根拠が書かれた小さい文字を探す。そこに調査方法が書かれていなければ、それ以上は追えない。書かれていれば、見る点は次の三つだけになる。
1. 【誰に聞いたか】。その商品を使ったことがある人か、サイトを見た印象で答えた人か。「利用有無は聴取していません」とあれば後者だ。
2. 【何と比べたか】。比較対象の選び方が「検索上位○社」となっている場合、市場の主要な商品が入っていない可能性がある。報告書は、検索結果で上位に出たものを比較対象にしているだけで主要な同種商品を含めていない調査を、問題となる例として挙げている。
3. 【いつの調査か】。調査時期が書かれていなければ、いまの話かどうかも分からない。
報告書は、事業者側に対して、調査方法の概要を表示するか、直接書きにくい場合はQRコードなどで確認できるようにすることが望ましい、とも書いている。裏を返せば、そこまで書いてある商品ページは、この点について丁寧なほうだと判断してよい。
9ここは混ぜないでほしい
一つ、線を引いておきたい。
この記事で扱っているのは景品表示法の話で、届出表示の話ではない。届出番号がある機能性表示食品だからといって、その商品の「満足度No.1」に根拠があることにはならない。届出は成分の機能について国に届け出た内容の話で、満足度は誰にどう聞いたかという調査の話だ。制度が別なので、片方があることで、もう片方が保証されることはない。
逆方向も同じで、満足度の数字に問題があったとしても、それは届出表示の内容が間違っていることを意味しない。分けて見る。
もう一つ、この報告書は特定の業種を対象にしたものではない。聞き取りの対象になった業種として挙げられているのは、学習塾・予備校、買取サービス、家具・寝具、結婚相談所、呉服・着物レンタル、食品、電子機器、ホテル・旅館、保険、ペット関連、不動産関連、美容エステ・サロンなどで、睡眠サプリを名指しした調査ではない。ここに出てくる割合を、睡眠サプリ市場の数字として読み替えないでほしい。報告書が業種ごとの内訳を出していないため、睡眠サプリの広告に満足度表示がどれくらいあるかは、この資料からは分からない。この記事でも数えていない。
10この記事のポイント
- 消費者庁が集めた広告368件のうち、No.1表示で最も多い指標は「満足度」で71件だった
- 「顧客満足度No.1」を見た人の56.8%が、実際の利用者に調査していると受け取っている
- 実際には、利用経験を問わずサイトの印象で答える「イメージ調査」が根拠になっている場合がある
- 「イメージ調査です」「利用有無は聴取していません」という注記があっても、表示と調査結果が対応していないことは変わらない
- 聞き取り対象の広告主15社のうち、調査の中身を把握していたのは1社だけだった
- 買う側が見るのは、数字ではなく注記。誰に聞いたか、何と比べたか、いつの調査か、の三点でよい
- 届出表示(薬機法・食品表示法の側)と、満足度・No.1(景品表示法の側)は別の制度なので、片方があってももう片方の保証にはならない
選び方そのものは睡眠サプリの選び方、箱に書かれた文章の読み方は届出表示の読み方で続ける。
- 消費者庁 表示対策課「No.1表示に関する実態調査報告書」令和6年9月26日(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/survey/assets/representation_cms216_240926_02.pdf)2026年9月10日確認。サンプル数368件(No.1表示275件・高評価%表示93件)とフレーズの分類、消費者の意識調査の数値(実際の利用者に調査していると思う=顧客満足度56.8%・人気57.7%、他社より優れていると思う=顧客満足度55.5%・人気53.9%、医師の90%が推奨に対する回答者が医師だと確認している48.7%・客観的なデータをもとに調査している46.5%)、イメージ調査の定義と質問文の例、注記の例3種とそれがあっても問題となるおそれは変わらないとする考え方、広告主15社中1社しか調査内容を把握していなかったこと、費用が1フレーズ10万円〜数十万円であること、調査会社の勧誘文句、結論ありきの調査に関する考え方、比較対象を検索上位で選ぶことに関する考え方、責任は広告主にあること、調査方法の概要の表示やQRコードが望ましいこと、聞き取り対象の業種は、いずれも同報告書による
- 消費者庁「「No.1表示に関する実態調査報告書」の公表について」(https://www.caa.go.jp/notice/entry/039459/)2026年9月10日確認
- 消費者庁 機能性表示食品 届出情報検索(https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/)2026年9月10日確認
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