手術や内視鏡の前に止めるべきサプリはあるか。薬剤師が休止の目安を判定する
- 止めるべきサプリはある。医療機関は術前の中止対象に薬だけでなくサプリも並べており、日本麻酔科学会も出血・血圧・血糖・麻酔への影響を挙げている。
- ただし「何日前に止めるか」は施設ごとに違う。1日前としている資料も、原則1週間前としている資料もある。ここに唯一の正解はない。
- だから本当の要点は日数でなく【申告】だ。サプリは薬でないという理由で問診票から抜け落ち、そのまま手術当日を迎えるのがいちばん危ない。
1まず押さえる一点
白内障、大腸内視鏡でのポリープ切除、歯科のインプラント、整形外科の手術。50代以降は、出血をともなう処置を受ける機会が増えてくる。そのとき「毎日飲んでいるサプリはどうするか」を自分で決めようとしないほうがいい。判断に必要な情報は、手術の種類・麻酔の方法・その人の常用薬という、こちら側からは見えない材料と組み合わせて初めて意味を持つ。まずは飲んでいるものを全部差し出す、というのがこの記事の骨子だ。
2なぜ気をつけるのか:影響の出方は一つではない
日本麻酔科学会は、一般向けの説明のなかで、健康食品やサプリメントの一部には手術中の血圧や心拍数に影響するもの、麻酔薬の効果や持続時間に影響するもの、出血のリスクを上げるもの、血糖値に影響するものがあると示している。つまり論点は出血だけではない。
なかでも件数として挙がりやすいのが出血に関わる成分だ。医療機関の術前中止リストでは、イチョウ葉エキス、魚油(EPA・DHA)、ビタミンE、ニンニク、朝鮮人参といった成分が繰り返し登場する。これらは日常の量で問題を起こすものではないが、メスが入る場面では話が変わる。血が止まりにくい方向にわずかでも傾けば、術野の見え方や術後の血腫に影響しうるからだ。
3「何日前」に正解がないという事実
ここが実務でいちばん誤解される。手元で確認できる範囲でも、サプリメント類は原則として観血的処置の1週間前に中止すると定める施設がある一方、イチョウ葉エキスは1日、EPA・DHAは3〜4日といった成分別の目安を示す資料もある。数字が割れているのは、どちらかが間違っているからではなく、手術の出血リスクと施設の運用方針が違うからだ。
したがって、ネットで見つけた日数をそのまま当てはめるのは筋が悪い。正しい手順は、手術を受ける施設の術前説明で配られる中止薬リストを見て、そこに書かれていないサプリについては薬剤部か担当医に直接聞くことになる。聞くときは製品名でなく成分表を見せるのが早い。
4具体的に注意したい組み合わせ
- 抗凝固薬・抗血小板薬をすでに飲んでいる人:もともと出血側に傾いているところへ、出血に関わるサプリが乗る。抗凝固薬とサプリも併せて確認したい。
- 複数のサプリを併用している人:同じ成分が複数製品に重複していることがある。サプリの重複で書いたとおり、把握の第一歩は全製品の成分表を並べることだ。
- 睡眠サプリの位置づけ:当サイトが扱うGABA、L-テアニン、グリシン、クロセチン、ラフマ、ガセリ菌CP2305について、術前中止リストの常連となるような出血リスクの記載は見当たらない。ただし複合製品にビタミンEや魚油が同梱されていることはある。判定は製品単位で行う。
- ALAについて:ALA(5-アミノレブリン酸)は、脳腫瘍や膀胱がんの手術で病変を光らせて見分けるための医薬品としても使われている成分だ。危険という意味ではなく、手術に関係しうる成分名として医療者に伝える価値がある、という意味で挙げておく。
- 内視鏡も同じ扱い:検査だけのつもりでも、その場でポリープを切除する可能性がある。出血をともなう処置が起こりうる以上、事前の申告対象になる。
5自己判断で止めない理由
逆方向の失敗もある。処方薬まで「血が止まりにくくなるらしい」と自分で止めてしまう例だ。抗凝固薬・抗血小板薬の自己中断は、血栓というより重い事象につながりうる。止めるかどうか、いつ止めるか、いつ再開するかは、必ず処方している医師が決める領域になる。サプリの相談をするときも、処方薬には触らないという線を引いておきたい。
6どんなときに受診・相談すべきか
手術や内視鏡の日程が決まった時点が、相談のタイミングだ。前日ではもう間に合わない成分もある。術前の説明外来か、かかりつけ薬局に、飲んでいるサプリの容器か成分表を持っていく。お薬手帳にサプリの欄を作って書き足しておくと、次の機会にも使える。
7この記事のポイント
- 術前に中止対象となるサプリは実在し、影響は出血だけでなく血圧・血糖・麻酔にも及びうる
- 出血側で名前が挙がりやすいのはイチョウ葉、魚油(EPA・DHA)、ビタミンE、ニンニクなど
- 中止の日数は施設で1日〜1週間と割れている。ネットの数字を自分に当てはめない
- 正解は日数でなく申告。製品名でなく成分表を見せる
- 処方薬の抗凝固薬・抗血小板薬は自分で止めない
- 内視鏡もその場で切除がありうるため申告対象
- 健康食品やサプリメント(よくある術前合併症):公益社団法人 日本麻酔科学会(https://anesth.or.jp/users/common/preoperative_complications/29)
- 手術を受ける患者さんへ:健康食品・サプリメントおよび市販薬の手術前中止について:日本赤十字社医療センター 薬剤部(https://www.med.jrc.or.jp/Portals/0/resources/yakuzaibu/jyutuzenkyuyaku.pdf)
- 術前中止薬一覧(サプリメント等は原則として観血的処置の1週間前に中止):独立行政法人国立病院機構 神戸医療センター(https://kobe.hosp.go.jp/images/2016/10/18_2yakuzaicyuushi02.pdf)
- 医薬品添付文書情報(5-アミノレブリン酸塩酸塩製剤ほか):医薬品医療機器総合機構(PMDA, https://www.pmda.go.jp/)
- 成分の安全性情報:国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報(HFNet, https://hfnet.nibiohn.go.jp/)
- 確認日 2026-07-27
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