グレープフルーツは薬と一緒に食べてはいけないのか。薬剤師が対象の薬と時間の空け方を判定する
[監修確認] この記事は薬剤師(運営者)の最終確認を待っています。
- 「全部の薬がだめ」ではない。問題になるのはCYP3A4という酵素で分解される薬で、代表は一部のカルシウム拮抗薬(血圧の薬)、一部のスタチン、睡眠導入薬のトリアゾラムなど。
- いちばん誤解されているのは時間差。グレープフルーツの作用は数日続くため、「薬と時間をずらせば平気」は成り立たない。
- 柑橘のなかでも分かれる。グレープフルーツ・ぶんたん・ダイダイ・スウィーティーは注意側、オレンジやタンジェリンは報告されていない側になる。
1「薬とグレープフルーツ」の一点
薬の説明でグレープフルーツを避けるよう言われた経験のある人は多いが、その理由と範囲まで説明されることは少ない。押さえる一点は、これが【薬をこわす話ではなく、薬が分解されなくなる話】だということだ。分解が止まるぶん薬が体に残り、効きすぎの方向に振れる。つまり避ける理由は「効かなくなるから」ではなく「効きすぎるから」であり、だからこそ薬の種類ごとに扱いが変わる。順に置いていく。
2仕組み:小腸のCYP3A4が止まる
グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分が、小腸にあるCYP3A4という薬物代謝酵素の働きを抑える。CYP3A4は、飲んだ薬を体に入る前にある程度分解して量を調節する関所のような役割を担っている。この関所が閉じると、通り抜ける薬の量が増え、血中濃度が想定より高くなる。
濃度が上がれば、その薬の副作用も出やすくなる。血圧の薬なら下がりすぎ、めまいやふらつき。スタチンなら筋肉の症状。睡眠導入薬なら翌朝まで残る眠気やふらつきという形で表れうる。効果が強まることは、利益ではなくリスクとして扱う。
3時間を空けても解決しない、という肝心な点
ここが実務でいちばん取り違えられている。フラノクマリン類によるCYP3A4の抑制は、酵素そのものを使えなくする性質のもので、体が酵素を作り直すまで元に戻らない。報告では影響が長いもので3〜7日続くとされ、2〜3日は避けるよう案内されることも多い。
したがって「朝に薬を飲んで、昼にグレープフルーツを食べる」では回避できない。同じ日に重ねなければよい、という発想自体が成り立たない相互作用だと理解しておきたい。対象の薬を飲んでいるなら、期間を空けるのではなく【習慣として外す】のが筋の通った対処になる。
4影響を受ける薬、受けにくい薬
同じ薬効群でも中身で分かれるため、名前で確認するのが確実になる。
血圧の薬(カルシウム拮抗薬)では、フェロジピン、ニソルジピン、ニフェジピンが影響を受ける側として報告されている。フェロジピンでは血中濃度が通常の数倍に達した報告がある。一方、広く使われているアムロジピン(ノルバスク、アムロジンなど)は上昇が15〜16%程度とされ、影響が小さい側に位置づけられる。ただし小さいことと無いことは別なので、自己判断で「自分のは平気」と決めない。血圧の薬とサプリの関係を先に俯瞰したいときは降圧剤を飲んでいる人のサプリの選び方が入口になる。
このほか、一部のスタチン(アトルバスタチンなど)、睡眠導入薬のトリアゾラム、免疫抑制薬のシクロスポリンが影響を受ける薬として知られている。スタチン側の論点はコレステロールの薬とサプリ、睡眠薬を飲んでいる場合の全体像は睡眠サプリと睡眠薬の併用にまとめてある。
5柑橘の仕分け
「柑橘類はすべて危ない」という理解も正確ではない。フラノクマリン類を含むとされるのは、グレープフルーツ、ぶんたん(文旦)、ダイダイ、スウィーティーなど。含有量は果肉より皮に多く、グレープフルーツでは白色種が最も多いとされる。
対して、オレンジ、タンジェリン、りんご、ぶどうでは含有が示されていない。柑橘を食べたいなら、こちら側に寄せるという選び方ができる。なおジュースは果実より濃く出ることがあるため、果物は控えているがジュースは飲んでいる、という抜け方には注意したい。
6サプリの側にも同じ論点がある
CYP3A4の話は食品だけの問題ではない。当サイトが扱う成分では、ラフマ由来のケルセチン配糖体に、研究段階ながらCYP3A4を抑える方向の報告がある。グレープフルーツを避けている人が、同じ酵素に関わりうるサプリを足していれば、避けた意味が薄れる可能性がある。
グリシン、L-テアニン、GABA、クロセチン、ガセリ菌CP2305については、CYP3A4を介した明確な相互作用の報告は確認できていない。ただし報告が見つからないことは影響がないことの証明ではない。薬とサプリの重なりを整理する入口は飲み合わせの総合ガイドに置いてある。
7確認のしかたと、受診・相談の目安
自分の薬が対象かどうかは、処方薬の説明書や添付文書に「グレープフルーツジュースとの併用に注意」の記載があるかで確認できる。分からなければ、薬の名前を持って調剤した薬局で聞くのがいちばん早い。ここは薬剤師が即答できる領域だ。
すでに食べてしまった場合、多くは一度で重大な事態に直結するものではないが、対象の薬を飲んでいて、ふだんと違うめまい・強いふらつき・立ちくらみ、筋肉の痛みや脱力、翌朝まで抜けない眠気が出たなら、様子を見ずに主治医・薬剤師に連絡してほしい。そして薬のほうを自己判断で減らしたり止めたりしない。動かすのは食習慣の側で、薬の調整は処方した医師の管理のもとで行う。
8この記事のポイント
- 問題の本質は薬が分解されず「効きすぎる」こと。こわれて効かなくなる話ではない
- フラノクマリン類がCYP3A4を抑え、影響は長いもので3〜7日続く
- 「薬と時間をずらせば平気」は成り立たない。対象薬なら習慣として外す
- 対象はフェロジピン・ニソルジピン・ニフェジピン、一部スタチン、トリアゾラム、シクロスポリンなど。アムロジピンは影響が小さい側
- 注意側の柑橘はグレープフルーツ・ぶんたん・ダイダイ・スウィーティー。オレンジ・タンジェリンは含有が示されていない
- ラフマ由来ケルセチン配糖体も同じ酵素に関わる報告があり、サプリ側も申告する
- グレープフルーツと薬物の相互作用、フラノクマリン類の含有と持続期間:国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報(HFNet, https://hfnet.nibn.go.jp/column/detail825/)
- グレープフルーツとCYP3A4:公益社団法人 日本薬学会 薬学用語解説(https://www.pharm.or.jp/words/word00822.html)
- 各薬剤の相互作用・併用注意の記載:医薬品医療機器総合機構(PMDA)医薬品添付文書情報(https://www.pmda.go.jp/)
- 柑橘類のフラノクマリン類と薬物相互作用:愛媛大学医学部附属病院薬剤部 DIニュース 2024年2月1号(https://www.hsp.ehime-u.ac.jp/medicine/wp-content/uploads/202402-1DInews.pdf)
- 機能性表示食品の届出内容:消費者庁 機能性表示食品 届出情報検索(https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/)
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