江崎グリコ
寝る前のGABAチョコは、たいてい睡眠の商品ではない。28mgと100mgの違い。江崎グリコを薬剤師が届出92件で解剖する
- GABAチョコには2つの系統がある。通常版の届出表示は「ストレスの低減」で、睡眠については届け出ていない。睡眠の届出があるのはfor Sleepだけだ。
- γ-アミノ酪酸の量も違う。通常版は10gあたり28mg、for Sleepは3粒に100mg。3倍以上の差がある。
- for Sleepにはカフェインも入っている。まろやかミルクが3粒で2.1mg、甘さひかえめビターが5.5mg。寝る前を意識するなら数字を知っておいていい。
コンビニのレジ横でGABAチョコを見ない日がない。寝る前に食べている人も多いと思う。ただ、いま手に持っているのがどちらの系統なのかを見てから買っている人は、あまりいないはずだ。
届出情報検索で江崎グリコ株式会社を引くと、届出は92件あった(2026-09-27時点)。数だけ見ると多い。ただし中身を開くと、LIBERAの<ミルク><ビター><素材たっぷり>がそれぞれ1件ずつ、BifiXヨーグルトも味と脂肪分の違いごとに1件ずつ、という並び方になっている。届出の件数は、根拠の数ではなく商品の枝の数だ。 ここを取り違えると「92件の会社」という印象だけが残る。
1GABAチョコは2つの系統に分かれている
「メンタルバランス」で届出を検索すると19件あった。並べると、届出表示が2種類に分かれる。
ひとつはストレスの系統だ。
本品にはγ-アミノ酪酸が含まれます。γ-アミノ酪酸には、仕事や勉強等による、一時的・心理的なストレスの低減機能があることが報告されています。
もうひとつが睡眠の系統、つまりfor Sleepになる。
本品にはγ-アミノ酪酸が含まれます。γ-アミノ酪酸には、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)の改善に役立つ機能があることが報告されています。
いま販売中と記録されているものを見ると、ストレスの系統がG818(塩ミルク スタンドパウチ)、F737(ミルク 小袋)、F720(ビター スタンドパウチ)、F719(ミルク スタンドパウチ)、D133(ミルク ちょい食べパック)。睡眠の系統がF756(甘さひかえめビター)、E490(ミルク)、D469(まろやかミルク)。
つまり、赤いパッケージの普通のGABAチョコは、睡眠について何も届け出ていない。 寝る前に食べるのは自由だが、それは睡眠の根拠がある商品を選んだことにはならない。
2量も違う。28mgと100mg
公式のブランドサイトに、それぞれの量が書かれている。
ストレスの系統は「γ-アミノ酪酸は、28mg(本品5粒相当)の摂取で仕事や勉強等による一時的・心理的なストレスを低減します」。for Sleepは「γ-アミノ酪酸は、100mgの摂取で眠りの深さ、すっきりとした目覚めといった、睡眠の質を高めます」「3粒にγ-アミノ酪酸100mgを配合」。
28mgと100mg。 睡眠を狙って普通のGABAチョコを食べる場合、for Sleepと同じ量を摂るには単純計算で3.5倍以上食べることになる。それは同時に、脂質と糖をその倍率で摂ることでもある。成分そのものの話はGABA(γ-アミノ酪酸)にまとめた。
34品を並べる。カフェインまで公開されている
公式の商品ページには栄養成分と、参考値としてγ-アミノ酪酸・カフェイン・カリウム・リンの量が載っている。現行の4品を並べた。
| 商品 | 1回量 | エネルギー | 脂質 | 炭水化物 | γ-アミノ酪酸 | カフェイン |
|---|---|---|---|---|---|---|
| GABA ミルク(パウチ・小袋) | 10g | 58kcal | 3.7g | 5.3g | 28mg | 1.6mg |
| GABA ビター(パウチ) | 10g | 58kcal | 3.8g | 5.4g | 28mg | 3.8mg |
| for Sleep まろやかミルク | 12.5g(3粒) | 71kcal | 4.4g | 7.0g | 100mg | 2.1mg |
| for Sleep 甘さひかえめビター | 11.75g(3粒) | 67kcal | 4.3g | 6.2g | 100mg | 5.5mg |
ここで目につくのがカフェインだ。睡眠用のfor Sleepのうち、甘さひかえめビターは5.5mgで、まろやかミルクの2.1mgより多い。 カカオの比率が高いぶんカフェインも増える。「寝る前だから甘くないほうを」と選ぶと、カフェインは倍以上になる、という逆の動きになっている。
ただし量は冷静に見たい。コーヒー1杯(150ml程度)のカフェインはおよそ60〜90mgとされる。5.5mgはその十数分の一で、これで眠れなくなる人はまずいない。不安を煽るための数字ではなく、知っておくと選びやすくなる数字として出している。 グリコがこれを参考値として公開しているのは、むしろ親切なほうだ。
4届出表示の文が、年を追って変わっている
19件を届出日の順に並べると、ストレス系統の文言が途中で変わっているのが分かる。
2017年のC284と2018年のD133、2019年のE514は「事務的作業による、一時的・心理的なストレスの低減機能」。2020年以降のF719、F720、F737、2021年のG818は「仕事や勉強等による、一時的・心理的なストレスの低減機能」になっている。
同じ成分、同じ会社、同じブランドでも、届け出た年が違えば書いてある文が違う。根拠にしている研究レビューが更新されれば、対象になる場面の書き方も変わるからだ。手元の袋に書いてある文が、ネットで見た文と少し違うことがあるのはこのためになる。
なお、for Sleepの届出表示には「改善に役立つ機能」という語が使われている。近年の届出は「維持」や「良好に保つ」に寄る傾向があるので、改善と書けているものは相対的に強い。この線引きはサントリーウエルネスの解剖でも触れた。
5根拠の規模は、そこまで大きくない
for Sleepの裏づけとして、グリコは試験の条件まで公開している。
睡眠に悩みを持つ健常な男女10名(平均37.7歳)を2群に分け、γ-アミノ酪酸100mgが入っているカプセルと入っていないカプセルを各々内容を知らせず7日間摂取してもらい、測定を行った。7日間のインターバルを設けた後、摂取するカプセルを入れ替え、再度測定を行った。
出典はFood Sci.Biotechnol.25(2):547-551(2016)で、「研究レビューに採用した論文データの代表例」と注記されている。
10名という規模は小さい。 摂取する側を入れ替えて比べるクロスオーバー試験なので設計としては手堅いが、人数の少なさは読んでおきたい。ヤクルトの解剖で見た試験は脳波まで測っていて、規模も条件も違った。同じ「睡眠の質」でも、後ろにある試験は商品ごとにまったく別物になる。
ここで出ている代表例が研究レビュー全体の規模ではない、という点も押さえておきたい。グラフの読み方は試験データとグラフの読み方に書いた。
6よくある質問
【普通のGABAチョコを寝る前に食べても意味がないのか】
睡眠について届け出た商品ではない、というのが事実だ。ストレスの低減については届出がある。目的が睡眠なら、for Sleepを選ぶほうが筋が通る。
【for Sleepは何粒食べればいいのか】
3粒でγ-アミノ酪酸100mgになる。それが届出の量なので、増やしても届出の範囲が広がるわけではない。
【寝る前にチョコを食べて大丈夫か】
3粒で67〜71kcal、脂質4.3〜4.4g。習慣にするなら1日の食事の中で数える。カフェインは2.1〜5.5mgで、コーヒー1杯のごく一部になる。
【GABAは薬と一緒に飲んでも平気か】
γ-アミノ酪酸には血圧を下げる方向の報告があり、降圧薬を飲んでいる場合は重なり方に注意する。詳しくはGABAにまとめた。
【不眠症に効くのか】
効能を期待するものではない。機能性表示食品は疾病の治療を目的としたものではない。市販薬との違いは睡眠サプリと睡眠改善薬の違いに書いた。
7薬剤師として付け加える注意
- 降圧薬を飲んでいる方は、GABAとの重なりを一度確認する。血圧が下がりすぎる方向に働く可能性がある
- 糖尿病で食事療法をしている場合、3粒で炭水化物6.2〜7.0g。毎晩続けるなら枠の中で数える
- 乳成分・大豆のアレルギーがある方は原材料を確認する
- 睡眠の相談を受けていていつも思うのだが、寝つきが悪い原因が飲んでいる薬の側にあることは珍しくない。チョコを足す前に、そちらを疑う順番のほうが早い
8誰に向いて、誰には向かないか
for Sleepは、サプリの粒を飲むのが苦手な人に向く。チョコなので続けやすいし、3粒という量もはっきりしている。デザートを1つ置き換える形なら、カロリーの追加もほとんどない。
一方で、糖質や脂質を管理している人には向かない。同じγ-アミノ酪酸100mgなら、粒のサプリのほうがカロリーはゼロに近い。「おいしく続けられる」ことの対価が、1回あたり70kcalだと理解したうえで選ぶといい。
そして普通のGABAチョコは、睡眠のための商品として買わない。それはストレスの商品だ。
9この記事のポイント
- GABAチョコは2系統。通常版の届出表示はストレスの低減、睡眠の届出があるのはfor Sleepだけ
- γ-アミノ酪酸は通常版が10gあたり28mg、for Sleepが3粒に100mg
- for Sleepのカフェインは、甘さひかえめビターが5.5mg、まろやかミルクが2.1mg。コーヒー1杯の十数分の一で、実害は考えにくい
- ストレス系統の届出表示は「事務的作業による」から「仕事や勉強等による」へ変わっている
- for Sleepの代表データは健常な男女10名のクロスオーバー試験。規模は大きくない
- 江崎グリコの届出92件は、味やリニューアルごとに番号が増えた結果で、根拠の数ではない
- 江崎グリコ株式会社(法人番号5120001049268)の機能性表示食品の届出92件、および「メンタルバランス」で検索した19件の届出番号・届出日・商品名・機能性関与成分・届出表示・販売状況(G818/F756/F737/F720/F719/E514/E490/D469/D133/C284 ほか):消費者庁 機能性表示食品の届出情報検索(https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/)/確認日 2026-09-27
- γ-アミノ酪酸28mg(本品5粒相当)およびfor Sleepの100mg(3粒に配合)、ストレスと睡眠それぞれの機能性表示、for Sleepの試験条件(睡眠に悩みを持つ健常な男女10名・平均37.7歳・7日間・クロスオーバー/出典 Food Sci.Biotechnol.25(2):547-551(2016)・研究レビューに採用した論文データの代表例):江崎グリコ GABAブランドサイト(https://cp.glico.com/gaba/)/確認日 2026-09-27
- 現行4品の内容量・栄養成分(10gまたは3粒あたりのエネルギー・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量)と参考値(γ-アミノ酪酸・カフェイン・カリウム・リン)、原材料名:江崎グリコ 商品情報 メンタルバランスチョコレートGABA 各製品ページ(https://www.glico.com/jp/product/chocolate/gaba/)/ページ更新日 2026年7月14日/確認日 2026-09-27
【今回確認できなかったこと】
- 各商品の希望小売価格(公式の商品ページに価格の記載がなく、1日あたりの費用は計算していない)
- for Sleepの根拠になっている研究レビュー全体の規模(公開されているのは代表例1報のみで、レビューに採用された論文の総数や被験者総数は届出資料の別紙を開かないと確認できない)
- 江崎グリコの届出92件の内訳(販売中と販売休止中の件数は、件数が多く今回は集計していない)
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