カモミールなど睡眠にいいハーブは効くのか。薬剤師が使い方と飲み合わせの注意を整理する
- カモミールなどのハーブティーは、香りと温かい飲み物でほっとして就寝前の習慣を整える助けにはなる。ただし「飲めば眠れる薬」ではなく、過度な効果を期待するものではない。
- ハーブは「自然だから安全」ではない。とくにセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)は、抗うつ薬・ピル・ワルファリンなど多くの薬の効き目を大きく下げるため、薬を飲んでいる人は要注意。
- 薬を飲んでいるなら、ハーブのサプリを自己判断で足す前に、医師・薬剤師に相談する。ここが薬剤師のいちばん言いたいところ。
1睡眠に使われるハーブの位置づけ
眠りのために、カモミール、バレリアン(セイヨウカノコソウ)、ラフマ、パッションフラワーといったハーブがよく挙がります。これらは古くから使われてきた植物ですが、まず前提として、ハーブティー一杯で不眠が解決する、という強い効果を期待するものではありません。
カモミールティーのようなハーブティーの現実的な役割は、温かい飲み物と香りで心身をゆるめ、「これを飲んだら寝る」という就寝前の習慣(入眠儀式)を作ることにあります。カフェインを含まないので、寝る前の一杯として置き換える価値はあります。効果を薬のように断定せず、くつろぎの習慣として使う——この距離感が適切です。ラフマのように機能性表示食品の関与成分になっているものもあり、その場合の届出の考え方はラフマの記事にまとめました。
2バレリアン(セイヨウカノコソウ)をどう見るか
睡眠のハーブとして名前が挙がる頻度が高いのがバレリアンです。欧米では古くから、寝つきや落ち着きを目的に使われてきた歴史があります。ただ、日本のサプリを選ぶ側の立場で見ると、押さえておきたい点が三つあります。
ひとつ、機能性表示食品の関与成分としては一般的ではありません。睡眠の質を対象に届出が積み重なっているのはグリシン・L-テアニン・GABA・クロセチンなどで、バレリアンはその中心にいません。つまり「届出表示で機能を確認する」という当サイトの選び方の軸が、そのままでは使いにくい成分です。
ふたつ、研究の結果が一貫していません。睡眠に関する臨床研究は複数ありますが、方法や品質にばらつきがあり、有効性の評価は定まっていないのが現状です。伝統的に使われてきたことと、効果が確かめられていることは別の話になります。
みっつ、飲み合わせと使う場面の注意があります。鎮静の方向に働くと考えられているため、睡眠薬・抗不安薬などの中枢に作用する薬やアルコールと重ねると、眠気やだるさが強く出る可能性が指摘されています。また手術の予定がある場合は、麻酔との関係で事前に中止を指示されることがあります。妊娠中・授乳中は安全性の情報が十分でないため避けるのが無難です。飲んでいる薬がある人は、始める前に医師・薬剤師へ伝えてください。
なお、バレリアンは根に由来する独特の匂いがあり、これが苦手で続かない人もいます。試すなら、匂いの許容度も現実的な判断材料になります。
3「自然だから安全」ではない
ハーブでいちばん誤解されやすいのが、「植物由来だから安全」という思い込みです。ハーブにも成分としての作用があり、薬との飲み合わせで問題が起きることがあります。
その代表がセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)です。気分の落ち込みに使われることで知られますが、体の中で薬を分解する酵素(CYP3A4など)の働きを強めるため、一緒に飲んだ多くの薬の血中濃度を下げ、効き目を弱めてしまいます。影響が知られている薬には、抗うつ薬、経口避妊薬(ピル)、ワルファリン(血液をさらさらにする薬)、一部のスタチン(コレステロールの薬)、免疫抑制薬などがあります。ピルを飲んでいる人では避妊効果に、抗うつ薬を飲んでいる人ではセロトニンの過剰に関わることもあり、軽く考えてよいものではありません。
セントジョーンズワートほどではなくても、ハーブと薬の組み合わせには未知の部分があります。だからこそ、薬を飲んでいる人は、ハーブのサプリやお茶を習慣にする前に、医師・薬剤師に一言相談してほしいのです。飲んでいる薬とサプリの重なりを俯瞰したいときは飲み合わせの総合ガイドも入口になります。
4広告の見方と、賢い使い方
ハーブの健康食品には、「これで熟睡」「不眠が改善」といった強い表現が付くことがあります。食品でそこまで効果を保証するように書けば、薬機法・景表法の観点で危うい表現です。派手な言葉ではなく、関与成分や届出表示という検証できる事実で見るのが安全です(届出表示の読み方、機能性表示食品とは)。
ハーブは、くつろぎの習慣として上手に使えば、就寝前の切り替えを助けてくれます。ただし「薬ではないが、薬に影響することはある」——この二つを同時に押さえておくのが、薬剤師のすすめる付き合い方です。
- セントジョーンズワートの薬物相互作用(CYP3A4誘導・抗うつ薬/経口避妊薬/ワルファリン等):厚生労働省「eJIM」、各医療機関・薬剤師会の一般向け情報
- ハーブと睡眠の一般情報:各医療機関の解説
- 消費者庁 機能性表示食品 届出情報検索(https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/)
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