栄養

経口補水液とスポーツドリンクの違い。薬剤師が熱中症の水分・塩分と、薬を飲む人の注意を整理する

まず結論
  • 経口補水液とスポーツドリンクは別物。経口補水液は塩分を多め・糖を控えめにして、失った水分と電解質を戻すことを狙った設計。スポーツドリンクは糖が多く、日常の水分とエネルギー補給向け。
  • だから経口補水液は「普段の水分補給に毎日飲む飲料」ではない。汗を大量にかいた、発熱や下痢・嘔吐で失った、という場面のためのもの。
  • 塩分やカリウムの制限を受けている人、利尿薬や血圧の薬を飲んでいる人は、自己判断で経口補水液を常用しない。ここがいちばん伝えたい点。

夏になると、経口補水液とスポーツドリンクがどちらも「熱中症対策」の棚に並びます。見た目は似ていますが、中身の設計は違います。どちらをいつ使うのか、そして薬を飲んでいる人が何に気をつけるべきかを、薬剤師の視点で整理します。

1設計が違う。だから味も違う

経口補水液は、ナトリウム(塩分)を多めに、糖を控えめに配合した飲料です。スポーツドリンクは逆で、糖がしっかり入っていて、ナトリウムは経口補水液より少なめです。飲み比べると経口補水液が「しょっぱくて甘さが物足りない」と感じるのは、狙いが違うからです。

なぜ塩分と糖の両方が入っているのか。小腸では、ナトリウムとブドウ糖が一緒にあるときに水分の吸収が進む仕組みがあります。だから水だけを飲むより、適量の塩分と糖を伴った液体のほうが、失った水分を戻しやすい。経口補水液の配合は、この性質を利用して組まれています。糖は「甘くするため」ではなく、水分を引き込むために入っている、という理解が正確です。

一方のスポーツドリンクは、運動中のエネルギー補給と飲みやすさを重視しています。汗をかきながら動き続ける場面には合いますが、脱水を戻す目的で見ると塩分が足りず、糖が多い設計です。

なお「経口補水液をおいしく感じるときは脱水している」という言い方を聞くことがありますが、これは目安の域を出ません。体調の判断材料としては当てにしすぎない方がよいと考えています。

2普段の水分補給に、経口補水液は要らない

ここは誤解が多いところです。経口補水液の出番は、汗を大量にかいた、発熱している、下痢や嘔吐で水分と塩分を失った、という「失った状態」を戻す場面です。何も失っていない日常の水分補給に使う飲料ではありません。

日常であれば、水や麦茶で足りています。麦茶はカフェインを含まないので、夕方以降や就寝前でも選びやすいのが実用的な利点です。カフェインを避けたい時間帯の考え方はカフェインは何時まで大丈夫かに整理しました。

経口補水液を毎日の飲み物として続けると、意図せず塩分を多く摂ることになります。塩分は「夏だから多めに」と単純に言えるものではなく、その人の持病と薬によって、増やすべきか抑えるべきかが変わります。次がその話です。

3薬を飲んでいる人が気にすべきこと

ここが薬剤師として本題です。経口補水液は「塩分とカリウムを意図的に入れた飲料」なので、それらを制限されている人には方向が逆になります。

塩分制限を受けている場合。 高血圧、心不全、腎臓の病気などで塩分を控えるよう言われている人は少なくありません。経口補水液の常用は、その指示と逆を向きます。暑い日に汗をかいた分をどう補うかは、制限の程度によって答えが変わるので、主治医に「夏場はどうすればよいか」を一度確認しておくのが確実です。血圧の薬を飲んでいる人が気にする点は降圧剤を飲んでいる人の選び方にもまとめています。

カリウムが上がりやすい薬を飲んでいる場合。 経口補水液にはカリウムも含まれます。ACE阻害薬やARBと呼ばれる血圧の薬、スピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬は、体にカリウムをためやすい方向に働きます。腎機能の低下が重なると、なおさらです。果物のカリウムと同じ考え方なので、梨の栄養で書いたカリウムの整理も参考になります。

利尿薬を飲んでいる場合。 利尿薬は体の水分を尿として出す薬です。夏場はもともと脱水に傾きやすいので、水分が足りているかは気にすべき点になります。ただし、だからといって自己判断で経口補水液を足す・薬を飛ばす、という対処はしません。利尿薬の種類によってカリウムが減る方向か、たまる方向かも変わります。詳しくは利尿薬と睡眠サプリに整理しました。

血糖を管理している場合。 スポーツドリンクは糖が多い飲料です。糖尿病の治療を受けている人が、水分補給のつもりで甘い飲料を続けて飲むと、血糖の管理に影響します。薬との関係は糖尿病治療薬と睡眠サプリの考え方が近いところにあります。

共通しているのは、「夏だから水分と塩分を増やす」を全員に当てはめられない、ということです。自分がどちら側かは、飲んでいる薬と受けている指示で決まります。

4夜の脱水と、夜間頻尿のあいだ

睡眠を扱うサイトなので、夜の話も書いておきます。寝ている間も、発汗と呼気で水分は失われます。夏場は特にそうです。夜間に脱水へ傾くと、寝苦しさや起床時の不調につながることがあります。熱中症は日中の屋外だけで起きるものではなく、夜間や室内でも起こります。エアコンを我慢して切る方が危ない、という場面は実際にあります。

一方で、就寝直前にたくさん飲めば、その水分は夜間の尿になります。夜中にトイレで目が覚める人にとっては、これが睡眠を細切れにする原因になります。切り分けは夜中にトイレで目が覚める(夜間頻尿)に整理しました。

現実的な置き方は、就寝前はコップ1杯程度にとどめ、枕元に水を置いて、起きたときに少し飲めるようにしておくことです。一度に大量ではなく、分けて摂る。この形なら、夜間の脱水と夜間頻尿のどちらにも寄りすぎません。

5経口補水液の段階ではない、というサイン

最後に線を引いておきます。次のような状態は、飲み物で対処する段階ではありません。

意識がはっきりしない、呼びかけへの反応がおかしい、自分で水分を摂れない、けいれんしている、体温が高いのに汗が出ていない——こうしたときは、経口補水液を探すより救急要請が先です。判断に迷う状況そのものが、迷わず助けを呼ぶ理由になります。

また、子どもと高齢の方は脱水に気づきにくく、口の渇きを訴えないこともあります。周囲が時間で区切って水分を勧める形にした方が確実です。

6できること・できないことの線

ここで整理できるのは、経口補水液とスポーツドリンクの設計の違いと、薬を飲んでいる人が確認すべき点までです。病気の診断や治療の判断はしません。経口補水液は水分と電解質を補うことを目的に設計された飲料で、熱中症を防ぐことを保証するものではありません。

塩分やカリウムの制限を受けている方、腎臓の病気がある方、透析を受けている方は、飲料の種類と量について必ず主治医・管理栄養士の指示に従ってください。この記事の一般論より、あなたに出されている個別の指示が優先されます。

7早見表

論点経口補水液スポーツドリンク
設計塩分を多め・糖を控えめ糖を多め・塩分は少なめ
狙う場面汗を大量にかいた/発熱・下痢・嘔吐で失った運動中の水分とエネルギー補給
日常の水分補給向かない(塩分過多になりうる)糖の量に注意
しょっぱく甘さ控えめ甘い
薬・状態注意の向き
塩分制限(高血圧・心不全・腎臓病)経口補水液の常用は指示と逆。主治医に夏場の方針を確認
ACE阻害薬・ARB・カリウム保持性利尿薬カリウムがたまりやすい。自己判断で増やさない
ループ・サイアザイド系利尿薬脱水に傾きやすい一方、補い方は自己判断にしない
糖尿病治療薬甘い飲料の量に注意

【監修】まさ(薬剤師・運営者/薬機法管理者/景表法第1級/コスメ薬機法管理者)

【出典・確認日】

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