手足が冷えて眠れない。薬剤師が冷え性と睡眠の切り分け、温め方を整理する
- 手足が冷えて寝つけないのは、眠るときに手足から熱を逃がして体の内側の温度(深部体温)を下げる、という仕組みがうまく働いていないサイン。
- 冷えて眠れないときは、手足を「温めて熱を逃がしやすくする」のがコツ。就寝の1〜2時間前の入浴、ゆるい靴下、湯たんぱ、が現実的。
- 冷えに、疲れやすさ・むくみ・月経の乱れなどが重なるなら、貧血や甲状腺の働きの低下が背景のこともある。生活の工夫で変わらなければ受診で確かめる。
1なぜ「手足の冷え」で眠れないのか
眠りに入るとき、人の体は手足の血管を広げて熱を外へ逃がし、体の内側の温度(深部体温)を下げます。この「熱を逃がして体温が下がる」流れに乗って眠気が来ます。ところが冷え性の人は、手足の血のめぐりが悪く、熱をうまく逃がせないため、深部体温が下がりにくく、寝つきにくくなります。
だから対策の方向は、意外に思えるかもしれませんが「手足を温める」です。手足が温まって血管が広がると、そこから熱が逃げて深部体温が下がり、眠りに入りやすくなります。冷たい手足を冷たいまま我慢するより、温めたほうが眠れる、という理屈です。
2冷えて眠れないときの温め方
現実的で効くのは、寝る前の温め方の工夫です。
いちばんは入浴です。就寝の1〜2時間前に、40度前後のお湯へ10〜15分ほど浸かると、いったん温まった体が布団に入るころに下がり始め、寝つきやすくなります(入浴と睡眠の記事に詳しくまとめました)。
布団に入ってからも冷えるなら、ゆるめの靴下や湯たんぽで足元を温めるのが有効です。ただし靴下はきつく締めつけると血のめぐりを妨げ逆効果なので、ゆったりしたものを。電気毛布は寝る前に布団を温めておき、眠るときには弱めるか切ると、深部体温の下がりを妨げません。日中に体を動かして血のめぐりをよくしておくことも、夜の冷えに効いてきます。寝つきそのものの切り分けは寝つきが悪い人の入口も参考にしてください。
3受診を考える目安
冷えは体質のことも多いのですが、次のような場合は背景に体の不調が隠れていることがあります。冷えに加えて、疲れやすい・息切れ・顔色が悪い(貧血のことがある)、体重の増加・むくみ・便秘・気力の低下(甲状腺の働きの低下のことがある)、指先が白や紫に変色する(血管の病気のことがある)——これらが重なるなら、内科での確認が向きます。とくに鉄の不足は冷えやだるさに関わることがあり、女性では珍しくありません。鉄と体調の関係は鉄分と睡眠の記事に整理しました。ただし鉄サプリを自己判断で足す前に、検査で不足を確かめるのが順番です。
4サプリの位置づけ
「飲むと体が温まる」「冷え性が治る」とうたう健康食品を見かけますが、栄養補助食品にそこまでの効果を保証する根拠はなく、薬機法・景表法の観点でも危うい表現です。まずは温め方と生活の工夫、必要なら受診で背景を確かめる——これが遠回りに見えて確実です。広告表現の読み方は届出表示の読み方にまとめています。
冷たい手足は、温めて熱を逃がす。この一手を押さえるだけで、冬の寝つきはかなり変わります。
- 深部体温・末梢循環と睡眠、冷えの背景(貧血・甲状腺機能低下など):厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド、各医療機関の一般向け情報
- 消費者庁 機能性表示食品 届出情報検索(https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/)